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武士がいる  作者: 長埜 恵
2.武士がいる
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身長のはなし

 武士が現代日本に来てから驚いたことの一つに、ちょっと意外なものがあった。


「ぬー?」


 それは、だいぶ武士も現代に慣れてきた頃。私と一緒に街を歩いていた武士は、やたら通行人を気にしていた。

 なんとなーく隣まで行ってみる。たまたま近くを歩いていた人と速度を同調させてみる。そして、じろじろと頭頂部あたりを見るのだ。


 やめんか!!!!


「ぬぬぅ! だって大家殿、まっこと不可思議なのだ!」


 私に猫の子のように首根っこを掴まれた武士は、無様にビチビチしながら弁解した。


「ここにおる者らは、何故か皆背丈が高い! しかも男だけでなく、女子もだ! 某、不思議でならぬ!」


 あー。

 そうか。そういや、昔の日本は栄養状態やら生活習慣やらで平均身長が低かったと聞いたことあるな。かくいう武士も160センチあるか無いかぐらいだし、現代日本はちょっとしたホビット気分を味わえる環境なのかもしれない。

 ……だからって、道行く人に背比べをしかけていい理由にはならないが。


「……今朝のてれびで、もで……も……もんべる?特集をやっておってな」


 ん? アウトドアグッズとか売ってるメーカーの特集なんざやってたかね?

 ……。

 あ、モデル特集か。覚え間違い当てるの難しっ。わかりづらっ。


「そこで、十一歳の女子が出ていたのだが……」


 うん。


「その子が、どう見ても大家殿より成熟しておったのだ……!」


 ああー、最近の子は大人顔負けなぐらい大人っぽい子も多いからね。

 いやなんで今流れるように私をディスったの?


「何故だろうか。某も大きくなりたい」


 う、うーん……。

 あれじゃないかな。やっぱ今って摂れる栄養素も格段に増えたから、もともと人間に眠ってたポテンシャルが最大限に引き出されてるんじゃないか?


「ぽちん……」


 ポテンシャル。可能性ね。ごめん、難しかったな。


「では、某もたくさん食べればあるいは……?」


 期待に満ちた眼差しがこちらを向く。捨てられた子犬が恐る恐る人間を窺う哀れなその目に、心優しい私はつい頷いてしまった。


 よって、この日の晩ごはんにて炊飯器が3合分カラになったのである。あの居候、加減ってもんを知らねぇな。そんでお前はもう成長期終わってるだろ。

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