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武士がいる  作者: 長埜 恵
2.武士がいる
244/679

ゲーム

 ドアを開けたら、武士がエプロン姿で立っていた。


「よくぞおかえり申した! さぁー、今宵はメシにするか!? 風呂にするか!? そ・れ・と・もー?」


 ゲーム。


 そう即答して、我々はテレビへと向かった。





 これが、ここ最近の流れである。

 私仕事行く、武士掃除とか買い物する、私家に帰る、二人でゲームする。独身男性二人暮らしとあれば、かようにも自由なものである。

 近年のゲームの進化といったらそれはもう素晴らしくて、あたかももう一つのリアルな世界がそこにあるようだ。そして最初こそ、そんな世界で自由に動き回れる感動に武士も打ち震えていたのだが。


「おぉえぇあぁぁぁぁええええ!!」


 ある日突然、アンインストールのイントロみたいな雄叫び上げて武士は吐いた。3D酔いしたらしい。


「なんだこれは……! もう見てられん! まるで籠に初めて乗った時のようだ……!」


 お前籠でも酔っちゃう奴だったんだな。じゃあ車とか乗ったらどんなんなるんだろ。見てみてぇ。


「大家殿は平気なのか!?」


 うん。私、グルグルバット三十回やったあとでも平気でまっすぐ走れる人。


「グルグルバット?」


 あ、知らない? まず棒があるじゃん。その先をこうして床につけて、んでもって額をこうしてそのままグルグル……。


「オオエェアァエェオォォォ!!!!」


 今やる奴があるかバカ!


 ――とまあそんな一幕があったものの、今では彼もだいぶ慣れて見られるようになりました。つっても、私がゲーム操作してるのを武士は眺めてる感じだけど。


「あああっ……! 大家殿、これはいかんぞ! これ以上はできぬ! い、行くのか? 行くのか! なんと勇気に満ち溢れた……ああああっ! このままでは砂に埋もれて間に合わんのではないか!? やはりさっきの道が正しかったのでは……んぬっ、もんすたぁ! 大家殿、横からもんすたぁが来ておるぞかなりでかいあああああああああほれみろ食われた!!!!」


 うるっっっせぇな。黙って見てろや。


 そういやコイツ、ジャッジアイズの時もそうだったな。私がチンピラボコってる(※ゲームの話です)時もずっとキャアキャア叫んでたわ。女子か。女子なら良かったのに。普段は清楚で慎ましやかなのに本性はちょっと過激なシスターだったらよかったのに。


 現実は非情である。だから今日も私はゲームの世界に引きこもるのだ。


「大家殿、あーん」


 なお、ここ最近はゲームをやりたいが為にメシは適当に買って済ませています。メニューは武士に任せているのですが、本日は焼き鳥でした。世界一嬉しくない「あーん」が届きましたが、丁寧に断り自分で食べました。

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