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武士がいる  作者: 長埜 恵
2.武士がいる
242/679

トカゲ

「大家殿ー! 来てくれーっ!」


 買い物に行っていた武士が、息を切らせて帰ってきた。と思ったら、くつろいでいた私の手を引き再び外へと飛び出そうとする。

 やめろやめろ! 今私パンツ一丁なんだぞ!


「問題無かろう、階段の下までだ!」


 あるよ!!!! ありまくるよ!!!! 住居者の方に半裸見られるとかリスクしか無いわ!!!!


 若干の抵抗の結果、無事パジャマ代わりのボロジャージを履く猶予を与えられました。


「思わぬ時間をくってしまった。まだおれば良いが……!」


 そして全速力で階段を駆け降りる武士である。つーか、そこまで急いで一体何見せたいのよ。


「! よし、まだおった! 大家殿! これ!」


 武士がしゃがみこみ、私に向かって激しく手招きをする。

 えー、何々? なんか変なもんでも落ちてたの?


「トカゲが! トカゲに噛みついておる!!」


 見ると、一匹のトカゲがもう一匹のトカゲの腹に噛みつき、そのまま二匹でじったんばったんしていた。


 どうでもいいよ。


 どうでも!! いいよ!!!!


 しかし思ったまま素直につっこんだら、ものすごく悲しい顔をされた。


「何故だ。大家殿には、この大自然の織りなす弱肉強食の営みが分からんのか」


 そこまででかい話じゃないだろ……。

 だが、よく見れば確かになかなか荒っぽく噛みついているものである。なんだろ、縄張り争いとか?


「ふむう、かもしれぬな。見過ごすのも忍びないし、助けてやるか」


 そう言って手を伸ばす武士を、急いで片手で制する。

 やめといた方がいいんじゃないか? お前曰く大自然の営みのことだし、だったら人間が手を出すべきじゃないと思う。


「だが、このままでは死んでしまうかもしれん」


 それもまた大自然の掟。


「むむう」


 あとほら、もしかしたら交尾とかかもだし。


「柿ピー?」


 交尾だよ。何、お前腹減ってんの?

 結局、トカゲはそのままにして部屋に戻りました。


 ……で、私がご飯作ってる最中に武士が調べてくれたところによると。


「交尾であった」


 あわやとんだおじゃま虫になる所だったらしい。へぇー、トカゲの交尾ってあんなんなんだねぇ。

 また一つ、賢くなった我々である。

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