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武士がいる  作者: 長埜 恵
2.武士がいる
235/681

傘がない

 傘は無いけど、君に会いに行かなければならない。

 確か井上陽水の歌だったか。


「雨である」


 今朝は、雨が降っていた。雨の降った回の「武士がいる」は、そこはかとなくポエミーな雰囲気になったりするけどね。今回はそんなことないよ。

 私は、本日の買い物担当の武士に向かって言った。


 なぁ武士、傘買っといてくんない?


「傘? 大家殿は既に持っておるではないか」


 持ってるよ。持ってるけど、なんか穴あいてんだよ。


「ぬー?」


 武士は唸りながら、スタスタと玄関に行く。そして私の傘を取り出すと、バサッと開いて中を検めはじめた。

 口頭で信じろや。


「ぬー」


 首を横に振る。どこにも穴など開いていないと言いたいのだろう。

 や、開いてんだよ。ほんとだって。差して歩いてたらいきなり首の後ろに水滴落ちてくるんだって。


「ぬ」


 信じられないって顔してんな。よし、じゃあ今日は私の傘をお前に貸してやる。それ差して買い物行ってきな。


「ぬー」


 了承してもらえたようで何よりだ。

 つーか私との会話をサボろうとすんなよ。何言いたいか大体わかるからいいけど。







 で、帰宅。


「首の後ろに冷たき滴が落ちてきた」


 どことなくしょんぼりとした武士が、正座をして私に真新しい傘を差し出してきた。どうやら私と同じ目に遭って反省したらしい。ざまみろ。いや、どんまい。

 まあまあ、いいよ。っていうか結局どこに開いてたんだろうね、穴。次の雑ゴミの日っていつだったっけ……。

 さて、どんな傘を買ってきてくれたのだろう。私は早速その場で傘を開いてみた。


「実に愛い、でんきねずみの傘が売っておってな」


 まさかのピカチュウ!!!!!!!!!!!(耳付き)

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― 新着の感想 ―
[一言]  かわいいものがツボな武士さんの選んだ黄色の電気ネズミさんの傘、耳付き。  これ、大家殿はぜったいさせない傘ですね…。武士さん専用にするしかないですねー。 ま、まさか武士さん、「計画通り」…
[一言] 武士の可愛いモノ好きを忘れてたー!! 耳付き傘可愛いもんね! 普通の大人なら躊躇するけど、武士だもんね! ちょんまげがピカチュウ傘(耳付き)をさしてたら、多分二度見じゃすまないと思います。…
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