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武士がいる  作者: 長埜 恵
2.武士がいる
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なす術が無い話

 なす術が無い。

 人間だもの。生きていたらそういうことだって、ままある。


 例えば、外出先でズボンが破けるとかね。


 なす術が無い。


「どこが破れたというのだ!?」


 やめろやめろ近づいてくんな。

 ほらここ。見てよ、その気になればパンツ見える。


「ふははっ」


 やめろ笑うな広げようとすんな。

 このズボンはいてるのって、条例的にはどうなのかな。願わくばギリ引っかからないラインであってほしいものだが。


 ともあれ、着替えるに越したことはない。

 折しも近くで服系のイベントをやってるのが見えたので、武士を連れて向かってみた。


「いらっしゃいませぇー」


 が、ちょっと違った。ファッションの方向性が、私とは違った。

 もう柄に続く柄。ポケットに続くポケット。私のユニクロシャツに合わせようものなら、余裕で飲まれてしまうだろう存在感。

 精神的民族性の違いとでも言うべきだろうか。とにかく、服の方が私を見放してる感がすごかった。


「ぬ、まだぱんつを晒しとるのか大家殿」


 そうしてしばらくうろついていると、武士がおにぎりをほおばりながらやってきた。だからお前買い食いすんなとあれほど言ってるだろ。

 いやだってさ、せっかく買うならいいの買いたいじゃん。妥協したくないじゃん。


「恥ずかしくないのか」


 まあパンツ見えてる時点で恥ずかしさの上限は決まってますからね。


「そういうものか」


 そういうものです。


「……しかしこうなると、普段から下穿きにこだわることがいかに大切であるかがよく分かるな」


 あー、江戸時代のふんどしはもう見せるもんだもんね。落語でも見たことあるよ、自慢のふんどし見せようとしてうっかり穿き忘れてた男の話。


「ははは、まるで大家殿のような男だ」


 私はお前みたいな男だと思うけどね?


「某はそんな失敗などせぬぞ!」


 ほっぺに大量の米粒つけてる奴が何か豪語してるよ。いいからどっかに座って食えって。


 その後別の店に行って店員さんに事情を話した結果、すんげえ親身になってユニクロシャツに合わせたズボンを選んでくれました。ありがたかったです。

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