花見
昨日は、少し遠出して桜を見に行きました。
満開の時期はちょっと過ぎたのか、そうでないのか。よく晴れた青空の下、薄桃色の花びらがブワーっと広がっている。それらをまとめて遠目で見てみると、なんだかそういう感じの雲みたいでとても綺麗だと思った。
「大家殿に情緒の言は無いのか?」
あるよ。今ありまくる発言したじゃん。
「なんだか感想がふわっとしておった」
それは別にいいだろ。夏目漱石ばりの感想返ってきたら、逆に反応に困らない?
「なつめそう……?」
あ、そっか。お前の時代には生まれてない人か。
時々昔の人としてひっくるめちゃうんだよな。ごめんごめん。
「ぬぬぅ」
めんご。
「……お、あれを見るがいい。あの辺りには椿が咲いておるぞ。少し遅咲きであるな。行ってみよう」
あれ、私たち桜見に来たんじゃなかったっけ。ああいいよいいよ、行ってみよう。
で、椿の花の所に来てみました。なんとなく、桜が咲いてる場所に比べて空気がひんやりとしてる気がする。椿の色合いのせいかな。葉っぱも花の色も濃いよね。
「むむ、やはり椿の季節も終わりか。だいぶ落ちておる」
辺りを見回し、武士は言う。
椿の花は、首がもげるようにボトッと丸ごと花を落とす。桜は一枚一枚ご丁寧に花弁が風に飛ばされるのに、この違いは何なんだろうな。
まあ正直、武士に言われた通り私は風流を解さない。プレバトに出たら一発レッドカード退場だろうし、わびさびな庭を見ても「落ち着いていていいけど地味っちゃ地味だな」とか思ったりする。多分庭師の人に尻蹴られる。
ふと、そんなことを武士に言ってみた。他に話題も無かったんだと思う。
「いや、某は大家殿が風流を解しておらんとは思わんぞ」
すると、奴はあっけらかんと答えた。
「見ろ。こんなにも椿の花が落ちておるというのに、大家殿は踏んでおらんではないか。桜の時もそうだ、大家殿はできるだけ桜を避けて歩いていた」
……。
「咲いた花を見上げ、歌を詠むだけが風流だとは思わん。落ちた花を踏まぬ心、きっとそれこそが風流なのだ」
……武士……。
……ありがとう。こんな雑な私の心を、風流だと言ってくれて。
でもさ、知ってる?
椿の花ってさ、踏むとすげぇ靴がベタベタになるんだよ。
「ぬうっ!?」
なんか分かんないけどベタベタになる。だからお前もマジで避けて歩いて。靴洗うの面倒だから。
「大家殿ぉ!」
うん、風流じゃないね。でも私なんてこんなもんだから。
あ、歌でも詠もうか? 季語とかガンガン入れるけど。
「某、次は警官殿と花見に来るでござる」
やめろあの人絶対すげぇ美味い弁当作ってきてくれるだろ私も呼べ。




