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武士がいる  作者: 長埜 恵
2.武士がいる
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竹刀

 アパートの主は大家。そしてその同居人はちょんまげ。

 ごく普通の二人はごく普通の出会い方をし、ごく普通に同居生活を始めました。

 でも、ただ一つ違っていたのは……


 同居人は、武士だったのです。


「刀を振るいたい」


 そんな謎のナレーションが頭を流れた夜。武士は、じゃがりこ(サラダ味)を貪り食いながら私にそんな提案をしてきた。

 え、何? 刀?

 ああ……そういやそんなものもあったね。


「普段はその辺に落ちておるゴミや枝を振るっておるが、警官殿に注意されてしまって」


 うん、昨日のことだっけな。

 神社で鉄パイプ振るう武士の幽霊が出ると騒ぎになってるから、なんとかやめさせてくれないかって。


「重さもちょうどよかったのに」


 よかったのに、じゃねぇよ。肝試しスポットになるにしても特殊すぎるだろ。テレビの取材が来ちゃったらどうするんだ。

 あ、取材料とかくれるのかな……。


「揺らいでおるな」


 まあいいや、話を戻そう。で、なんだっけ? 刀? 鉄パイプで怒られたから、刀で素振りしたいんだって?


 いやダメだろ。もっとダメだよ。


「ならぬか」


 ならぬな。何なら銃刀法違反でお縄になっちゃう。そうなったら保釈金いくらかかるんだろ。


「大家殿はいつも金のことばかりであるな」


 誰のせいだと思ってんの……?


「では、何か他にほど良き重さの棒は無いか?」


 えー……? ほど良き重さで神社で素振りしてても問題無いやつ? うーん……。

 ……あ、シンプルに竹刀は?


「おお、良いではないか! しかも今であれば、かなり質の良い竹刀が売られておるのではないか!」


 そうだね。もしかしたら江戸時代のよりはいいかもな。


「びーむが出たり!」


 それはどんな時代にもねぇよ。


 それから、武士と一緒に通販で竹刀を探しました。武士はしきりにライトセーバーのおもちゃを欲しがってましたが、それはそれで警察案件になりそうなので普通に竹刀を買いました。


「おおおお! 硬い! 重い! ちょうどいいぞ!!」


 そして届くなりテンション上がった武士は室内で竹刀をぶんまわし、お湯を入れてたカップ麺をぶち倒しました。

 そういうわけで、今ここに逆エビ固めを食らっている武士がいるのです。

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