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武士がいる  作者: 長埜 恵
2.武士がいる
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テレビ殿

 武士が現代日本に来て、早一年と少し。

 こうなると、武士もだいぶこの場所に慣れたもんでね。ちょっとした洋式便所如きにはもうビビらなくなったし、今ではコンビニでトイレも借りることができるという。

 でもそうなるとお前、アイデンティティがちょんまげぐらいしか無くなるんじゃねぇか。


 そんなことを思っていた本日。


「お、お、大家殿……!!」


 家に帰ると、武士がぷるぷるとテレビの前で震えていた。

 何、どうしたのよ。


「某……未来にて面白きてれびを見つけてな。早速それを得ようと思うたのだ。しかし此奴は一度に一つしか得られんだろう? それは分かっていたのだがな、ものは試しとやってみた所、なんと二つとも得ることができたのだ!」


 翻訳すると。


 最近、テレビのレコーダーを新しいものに買い替えたんですよ。で、それまでのやつは一本しか撮れなかったんですけどね、新しいやつは同時に三本録画できるんです。

 しかし、武士はそれを知らなかった。故に、突然二本同時録画をすることができて、腰が抜けんばかりに驚いたとこういうわけなのです。


「……実は某、かねてよりてれびが二つ得られたら良いなと思っておった。さすれば、喜びも倍になるからな。……だが、それが知らぬ間に叶っていたとは……何故……?」


 なんでだろうなぁ。

 ところでお前、米炊き忘れてない?


「まさか……てれび殿か? てれび殿に魂が宿り、成長してくれたのか? 某の命を受けて……!」


 そうかもなぁ。

 それよりお前、米を研いですらないね? ねぇ、炊飯器空っぽなんだけどどうなってんの? 私おかず買ってきちゃったんだけど。


「てれび殿……愛い奴め……!」


 ダメだ、聞こえてねぇな。このポンコツ武士め。


 そういうわけで、武士は今テレビ殿を優しく労っております。具体的に述べるなら、なんかこう、撫でています。いつ本当のこと言おうかな。タイミング完全に逃しちゃったけど。


 とにかく、まだまだ面白そうである。武士。

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