表示調整
閉じる
挿絵表示切替ボタン
▼配色
▼行間
▼文字サイズ
▼メニューバー
×閉じる

ブックマークに追加しました

設定
0/400
設定を保存しました
エラーが発生しました
※文字以内
ブックマークを解除しました。

エラーが発生しました。

エラーの原因がわからない場合はヘルプセンターをご確認ください。

ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
武士がいる  作者: 長埜 恵
2.武士がいる
21/676

改札と電車

 そういえば、改札機を初めて見た時の武士の高揚っぷりといったらなかった。


「だ、駄目だ! 引っ張るでない! これが無いと鉄の箱に乗れぬ……ああーっ! よせっ! あ、板が開いた。お、おお……通っていいのか? まことか? それだけでなく……お主、通行券も返してくれるのか……? ……すまぬ、某は主を勘違いしておったようだ……!」


 めっちゃ面白いけど、できれば他人として見たかったな。


 電車にも相当ビビっていた武士だったが、無理矢理背中を押して乗車させた。満員電車でもないのに。私は駅員でもないのに。


 車内での武士は、発車するまでずっと椅子にしがみついて震えていた。後で聞くと、どうも電車の速度に負けて後方に吹き飛ばされると思っていたらしい。


「満員電車とやらは、そうやって吹き飛ばされない為の手段ではないのか?」


 それを聞いた瞬間、私の脳内にコウテイペンギンの姿が浮かんだ。

 彼らは過酷な南極の大地で、凍え死なないよう円陣を組んで互いを温めているという……。


 いや、満員電車と全然関係なかったわ。


 江戸で暮らしていたままだと到底見ることはなかっただろう速度で流れる景色に、武士は目を剥いて見入っていた。

評価をするにはログインしてください。
ブックマークに追加
ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
― 新着の感想 ―
このエピソードに感想はまだ書かれていません。
感想一覧
+注意+

特に記載なき場合、掲載されている作品はすべてフィクションであり実在の人物・団体等とは一切関係ありません。
特に記載なき場合、掲載されている作品の著作権は作者にあります(一部作品除く)。
作者以外の方による作品の引用を超える無断転載は禁止しており、行った場合、著作権法の違反となります。

この作品はリンクフリーです。ご自由にリンク(紹介)してください。
この作品はスマートフォン対応です。スマートフォンかパソコンかを自動で判別し、適切なページを表示します。

↑ページトップへ