いぶ
腹が、痛い。
え、どれ? 確かに最近ちょっと不摂生入ってたけどさ。分かっていながら今日ファミマでチーズがインしてるファミチキ買っちゃったけどさ。めちゃくちゃ美味しかったけどさ。
……シンプルに食べすぎかなぁ。
そう思ってこたつでゴロゴロしていると、武士も唸り出した。
「腹が痛い」
おーまーえーもーかー。
お前もなのか。
なんでだろうなぁ。なんでだと思う? そういや昨日回る方の寿司屋さん行ったよね。私もお前もめちゃくちゃ食べたけど。お前はプリン、私はフォンダンショコラをシメで食ったけど。
……あー、やっぱ食べすぎ?
「昼に食べたみかんであるが、少しばかり溶けていた気がする」
そりゃおめー腐ってたんじゃねぇか。それだよ、それ。
あー。
でも、今日クリスマスイブなんだよね。それなりに御馳走的なの買ってんだよね。
明日に回す?
「ならぬ!!!!!」
ボロアパートが震えるようなでけぇ主張。
「ならぬ! ならぬぞ! 某、“ちきん”も“ぽてと”も心より楽しみにしておったのだ! それらを食せるというのなら、たとえこの腹が裂けても悔いはない!」
切腹並みの覚悟しなきゃ食べられねぇの、ほんとよくないと思うよ。
「ぬぬぬぬぬ……! しかし……!!」
だからさ、これ。
「……む、これは“らむね”か?」
ラムネじゃねぇよ。丸薬だよ。腹痛に効くの。
「……!」
何。
「大家殿は……薬屋だったのか?」
違うよ。
こうして、一時間後には無事腹の痛みがおさまった武士と共にクリスマスの御馳走を食ったのである。
武士はチキンやポテトに舌鼓を打ちながら、私に尋ねた。
「ところでケーキは?」
間違えて明日に注文しちゃった。
「オノレェ!!」
メリークリスマス!!




