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武士がいる  作者: 長埜 恵
2.武士がいる
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パン屋さん

 なんかね、朝起きて武士がいる生活にもまあまあ慣れてきたわけですよ。

 というか、もうインテリアの一部というか。ここにベッドがあるでしょ? そんでコタツ。で、武士を挟んであちらにクローゼットがございます。ナチュラルに家具のジャンルに武士を置いていこう。


「腹が空きもうした」


 家具が喋った。


「ぬう、某は家具ではござらん。武士である。腹が空きもうした」


 それはさっき聞いたよ。

 へぇ、お腹空いたの。奇遇だね、私もだよ。


 でもさ、お前冷蔵庫見た? 何もねぇの。


 このクソ寒い朝に、家に何も食材がねぇの。


何故なにゆえ


 そうね。

 多分だけど、昨日「こうするとキリがいいから」とかワケわかんねぇ理由で米櫃を空にした武士がトドメになったことだけは間違い無いよ。


「今朝はパンの気分」


 聞けや。

 んー、でもそだね。たまにはパン屋さんに行ってみるのもいいか。





 そんなわけで、パン屋さんに来たのである。

 焼きたてのパンの匂いが漂うお店には、ソーシャルなディスタンスを保ったお客さんが並ぶ。その最後尾に私と武士は収まっていた。

 そして、マスクを装着した武士のちょんまげに視線が集まっている。小さな子供が「ちょんまげー」と指を差している。まあ、これももう慣れた光景だ。

 だが、子供の声援に応え左右に小気味良く揺れる武士のこの行動だけは意味が分からねぇ。手を叩いたらウネウネするグラサンつけた花みてぇなことするな、コイツ。


「ぬ。ぬ。ぬ。ぬ。ぬ。ぬ」


 そんで、テンポよくパンをトングで挟んではトレイに運んでいく武士である。おい待てそれ全部食えるんだろうな。もう山になってんじゃねぇか。マジかよコイツ。


「たこ焼きパンは二個」


 美味しいよね。いやだから本当に食えるの?


 こうして、両腕が肩からもげそうなぐらいのパンを買い、家に帰ってきたのである。ちなみに武士は、全体の三分の一あたりを食べた所で脱落した。


「居並ぶパンを見た時は、全て食べられると思うたのに」


 その気持ちは分からんでもないけどね。ああ、塩パンは今日も美味しいなぁ。

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