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武士がいる  作者: 長埜 恵
2.武士がいる
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甥襲来・前編

 よくラブコメで見るお約束展開。

 主人公とヒロインの前に幼子が現れ、その子を巡っててんやわんやし、最後は「俺たちも、いつかは……」なんて呟いて両者赤くなって終わる。

 そんなことを、ふと思い出した今。


「ちょんまげ!」

「ぬぅうおわああああ! 痛い! 痛いぞ、チビ殿!」

「きゃっきゃ!」

「ぬううううううう!! 助けてくれ大家殿ぉ!!」


 ――私と武士は、姉から一時的に預かった幼児の面倒を見ていた。


「おうまさんしてー」

「ひひーん!」

「ちがう! おうまさん!」

「ブルルルッ、パカラッパカラッ」

「ちがうの! おうまさんなの!」

「ぬぅっ!?」


 ……なぁ、武士。多分その子ね、四つん這いになった武士の背中に自分を乗せろって言ってるんだと思うよ。決してモノマネを要求しているのではないと思うよ。


「あい承知つかまつった!」

「おうまーっ!」


 すぐさまうつ伏せになる武士に、三歳児がよじよじと登る。キャッキャしながら武士に懐いている坊やを見るに、あまり人見知りをしない子なのだろう。


「ちょんまげまーち!」

「ちょんまげまーち?」

「ごじゃるでごじゃるでごじゃるー!」

「ぬおっ! チビ殿、揺らしてはならぬ! 落ちるぞーっ!」

「きゃっきゃ」


 二人とも楽しそうである。何よりだ。


 一方、私はあまり子供が得意ではない。好きとか嫌いじゃなく、どう接していいか分からないのだ。人並みに可愛いとは思うけど、その先が無い。

 これも、自分の子供ができたら変わるのだろうか。

 だが残念なことに、彼女のかの字も見えない現状ではそれも無理だなとため息をつく。いや嘘だ。ため息つくほど深刻な話でもない。

 というわけで、私は楽しそうな二人を見守るのみである。武士は子供好きなんだよな。下に兄弟とかいたのだろうか。


「大家殿ーっ! チビ殿がお漏らしをなされたぞ!」

「ぬれた」


 え、マジで? うわ、マジだ。

 ああ大丈夫大丈夫、怒ってないよ。姉ちゃんが用意してくれた着替えもあるから。

 でもあれ? 君オムツ履いてなかったっけ?


「うむ、それがびっくりなのだがな。チビ殿、いきなり下履きをずらしてじっとしていたかと思うと、そのままチョロチョロと放尿し始めたのだ」


 なんで?


「分からん……。なぁチビ殿、何故厠に行かなかったのだ? おしっこをしたくなったらおしっこと言うべきである」

「おしっこー!」

「今ではない」


 前途多難である。

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