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武士がいる  作者: 長埜 恵
2.武士がいる
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顔がいい人の話

 突然で申し訳ないんだけど、イケメンの話していい?


 取引先の営業マンに、すげぇイケメンがいるんすよ。身長高くて、ジャニーズの某君に似てるような。当然トークも上手いし、営業成績もいいらしい。

 顔が良けりゃ何でも上手くいくってわけじゃないけど、スマートでいいなぁと思ってたんすよ。

 したら、先日。その兄ちゃんと一緒に別の客先に向かう用事があった時の話。

 なんかすげぇ書きやすそうなボールペン持ってたから、「それどこ製?」って聞いたんですよ。すると、どうも兄ちゃんとこの会社の商品説明会で配布された物だったらしく。

 じゃあ買えねぇなぁ、残念だわーって思ってたら、兄ちゃんグッと顔近づけてきて、私にボールペン握らせたんですよ。

 で、言ったんです。「内緒でプレゼントです」って。


 いやぁ、背筋が凍ったね。だって近いんだもん。

 私の人生において、人間に顔を近づけることなんて無かった気がする。ほら、顔には好みがあるじゃん。パーソナルスペースとかもあるし。

 あれは、嫌がられたことの無い人間の距離だった……。


「それは単に大家殿が卑屈なだけではないか」


 そして武士に話したら、一刀両断された。悲しいよね。


「顔で人を判断するなど、言語道断であるぞ。日本男児として嘆かわしい」


 なんかすげぇ説教されてるぅー。しゃあねぇじゃん、イケメンとのカルチャーショックにビビったんだから。


「かるた食?」


 食うもんじゃねぇなぁ、カルタは。


 そうこうしているうちに、ユニクロに着いたのである。アルコール消毒をして、検温してもらって中に入る。世情柄仕方ないね。

 が、ここで武士が立ち止まっていた。


「なんぞ、あの面妖な機械は……」


 あ、検温機のことかな。

 おでこに当てて、ピッとするやつ。


「な、何の為にするのだ」


 そりゃお前ー……。


 ……。


 顔面偏差値を確認する為ですよ。


「ガンメンヘンサチ?」


 ユニクロは、今や世界的ファッションブランドの一つだからな。

 ある程度の顔の良さが無いと着る権利が無いんだよ。


「なんと!?」


 まあだいぶ緩いから大丈夫大丈夫。ほら、調べてもらいな。


「ぬぬぬぬー……」


 そして検温機に向かう武士。


 元気いっぱいの武士、当然無事突破。


「ぬおお、大家殿! 認められたぞ!!」


 そして店員さんにオーケーもらった瞬間、武士がこっちを振り返って大喜びしていた。側から見たら、ちょっとテンションのおかしい兄ちゃんだったろうな。私は他人の振りをした。


 真実を教えたのは、家に帰ってからである。





 ちなみにこれは三週間ぐらい前の話です。今日は家から一歩も出てません。鼻水止まらねぇや。

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