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武士がいる  作者: 長埜 恵
2.武士がいる
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手に入る幸せを

「“これが無いと自分は幸せになれぬ”と思うておる者は、大抵それが手に入っても幸せになれぬぞ」


 そんなことを武士に言われた日も、


 私はビックマックを食べていた。


 え、いきなり何すか。


「げぇむのがちゃ」


 あー、あれね。私が最近やってる奴ね。

 そんで私が「あー! これが手に入ったら幸せになれるのになー! 最高なのになー!」っつってたのをお前覚えてたわけか。


「うむ」


 時間差あり過ぎね? 一昨日の話よ?


「今思い出した」


 ハッピーセットについてくるオモチャで遊びながら?

 まあいいか。でもさ、武士だって可愛い靴下集めるの好きじゃん。もしあれがガチャガチャでしか出なかったらって考えてみてよ。「あー! これが手に入ったら幸せになれるのになー!」って思わん?


「物を集めたいその心はわかる。某の父とて、蒐集家であったからな」


 あ、そうなの?


「そうだ。我が父も、よく『あれが手に入ればなぁ』とぼやいておった。だがそれ故にトラボゥも生まれたものよ」


 おい待て今何つった? 虎棒?

 トラボゥ……トラ……あ、トラブル?

 いやなんでネイティブに寄ったのよ。


 まあ、でもそうだよな。集めたくなったら、お金かけちゃうもんだし。それで身を持ち崩しちゃう人もいるぐらいだし……。


「いや、某の父が集めておったのはかんざしでな」


 ……。


「ところがある日、それを買っている所を母に見られていた。母は当然自分が貰えるものと思っていたそうだがな、何せ父用なのでそんなはずもなく」


 ……。


「一向に簪を贈られる気配が無く業を煮やした母が、ある日とうとう父の不貞を疑い、結果我が家はえらいことになった」


 わぁ。


「父も父で、簪集めをひた隠しにしておったからな。それはもう面白いぐらいに拗れたぞ」


 わぁー。


「そういうわけだ。“これが無いと自分は幸せになれぬ”と思うておる者は、大抵それが手に入っても幸せになれぬ」


 まさか冒頭の格言がただの痴話喧嘩に繋がるとはな。

 いや、うん。でもなんか身に染みたから、これからは自分の持ってる幸せにもっと目を向けることにするね。ありがと。

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