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武士がいる  作者: 長埜 恵
2.武士がいる
182/677

お月見

 さっむぁ!!!!


 朝。布団からちょろっと足を出すなり、即引っ込めてしまった。寒い。寒すぎる。

 何なの? 気温差スプラッシュマウンテンなの? 加減というものを知らないの?

 まあ毎年のことであるが。


「おお、大家殿。お目覚めか」


 で、今日も今日とて武士がいた。たくましい上裸を晒し、もっすもっすとパンを頬張っている。

 寒くねぇのかな。あー、鍛錬帰りっすか。立派なことだね。とにかくおはよーさん。


「今日はお月見であるぞ! 見ろ、あの澄み渡った空を! 今宵は良い月が見られそうだ!」


 ふーん……。


「なんだその鼻から魂が抜けたような声は」


 私朝からテンション高ぇ人苦手なんだよね。


「知らぬ」


 行ってきまーす。





 そして帰ってきた。


「おかえりでござる」


 ところで、最近わかったことがあるんだけどね。

 武士、何かごまかしたい時は何故か「ござる」って言い出すんだよ。

 マジで理由はわかんないんだけど。


 オーケー、何したわけ?


「……」


 武士の背中で、ガサッとエコバッグが音を立てる。軽い攻防の末、何とか奴の隙をついてエコバッグをひったくることに成功した。

 すぐさまひっくり返すと、中から出てきたのは……。


「……月見団子でござる」


 まんまるい、お団子であった。


「……実は某、江戸におった頃にも、月を見ながらこうして団子を食べたものだった」


 ……。


「見ろ、大家殿。月だ。江戸から遠く離れた場所に来たというのに、あれだけは江戸で見たものと全く変わらぬ」


 あ、まだエコバッグに何かある。


「不思議だ。きっと某が爺になって儚くなる日が来たとしても、月だけはやはり変わらずそこにあるのだろう」


 これ月見まんじゅうか。あ、うさぎまんじゅうまで買ってやがる。

 そんでこっちはお月見ゼリー。お月見クッキー。お月見どら焼き。


「ここは江戸とは大違いだ。なのに、月の美しさも花の香も全く変わることはない。某が知るものと同じだ」


 そんでお前、月見バーガーまで買ったのか。


「不思議よのぅ……」


 ねぇいくら使ったの?

 ねぇ食べ切れるの?

 ねぇ全体的に賞味期限今日なんだけど。

 ねぇ。


「そして月見酒」


 うるせぇわ。

 御相伴させていただきます。

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