ショックなことがあった
すんげぇショックなことがあった。
いやー、人間マジで衝撃的なことがあると立てなくなるんだね。知らなかった。
「どうした大家殿!?」
そんなわけでスマホを手にひっくり返っていたんだが、武士に見つかって大騒ぎされた。ギックリ腰になったのかと思ったらしい。
で、事情を説明した。詳細は省くね。また泣いちゃうから。
「なるほど」
一通り聞いた武士は、べっそべそに泣く私にうんうんと頷いてくれた。
「何事にも永遠は無いからなぁ。しかしそのように思えるものと出会えたことは、大家殿にとっては実に幸運なことであったのだろう」
うん。そうなんすよ。
出会えてなかったら、ここまで来れなかったんですよ。
しかし、この年になってこんなにガン泣きすると思わなかった。元カノと別れた時ですら泣かなかったのに、みっともないねー。
「それは歳を取った証拠だろう」
ンだとテメェ。
「だが、それほどまでに心を動かされる存在というのは得難いものだ。だからせめて大家殿は、死ぬまでそれを心の臓に持っておくといい」
そうだな。
そうするわ。
……ずっとさー、その人を目標にしてたのよ。だからさ、その人がいなくなったなら、もう自分はどこに向かって歩いていきゃいいのかわかんねぇんだわ。
「うむ」
うん。
「うむ」
うん。
……そんでもさー、歩いてりゃ、どこかには行けるかな。
「うむ! 歩けば景色は変わるし、いずれたどり着く場所もあるぞ!」
うん。
そだな。
「うむ!」
……。
「ぬ、どうした?」
いや、その人がね、「笑っていられるなら、それで全てにおいて勝てるんだ」っつってたんだよ。時々忘れてガチ凹みすることも多いんだけど、私自身ほんとそれは絶対の本当だと思っててさ。
「うむうむ」
……私がお前のこと嫌いじゃないの、そういうとこなのかもな。お前ってずっと笑ってんじゃん。いや怒ったり拗ねたりもすんだけどさ。
「ほう」
時々、すげぇなって思うよ。
「そうか! ならば特別に、大家殿を某の弟子にしてやっても良いぞ!」
それは嫌かな。
「即答ではないかー!」
ひひひっ。




