今日は疲れた
眠い。
時刻は日付の変わる頃。
家に帰るなり床に倒れ伏した私に、武士はのこのことやってきてしゃがみこんだ。
「大家殿、お疲れ申したか」
おお、お疲れ申しておるよ。
返事をするのも面倒で、ひらひら片手を振った。
「弱ったな。しかし、飯を食わねば元気が出ぬぞ」
そーだよなー。
でも、よくよく考えてみればなんで私が毎日飯を作ってんだろうな。
普通居候する側が作るんじゃないのか。あれか、そこはやっぱ武士だからか。町娘とかがタイムスリップしてくれたら、お惣菜とか作って待っててくれたのか。
「おかえりなさい、旦那様」とか言って。
着物をたすき掛けとかしちゃったりして。
ちょっと待てよ、こっちがいいよ、なんでお前が来ちゃったんだよ、斬新なスリップ事故かよ。
はー、動けん。
そのまま倒れていると、武士は米をよそったお椀を、私の口元に持ってきた。
「どうだ、食えそうか?」
あー……。
そうだなぁ、今日はもうおかず作るのはいいか。
でも、漬け物とか海苔とか無かったっけ。
「大家殿を待つ間、腹が減ってな。これぞ手頃と思い、全部食べた」
武士の手の届かない所に隠しとくべきだったな。
私の思いなど知る由もなく、武士はニコニコと笑った。
「其が飯を運ぶからな。大家殿はそこで寝ながら食べるがいい。体の言うことを聞いてやるのが、健康の秘訣だぞ」
じゃあ漬け物食べたいんだけどな!
だがまあ、寝転がって食べることにした。が、とても食べにくかったので、途中から座り直し、もそもそと白米を食す。
他に何の味もしない白いご飯は、本当に美味しかった。




