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武士がいる  作者: 長埜 恵
2.武士がいる
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今日は疲れた

 眠い。



 時刻は日付の変わる頃。

 家に帰るなり床に倒れ伏した私に、武士はのこのことやってきてしゃがみこんだ。


「大家殿、お疲れ申したか」


 おお、お疲れ申しておるよ。

 返事をするのも面倒で、ひらひら片手を振った。


「弱ったな。しかし、飯を食わねば元気が出ぬぞ」


 そーだよなー。

 でも、よくよく考えてみればなんで私が毎日飯を作ってんだろうな。

 普通居候する側が作るんじゃないのか。あれか、そこはやっぱ武士だからか。町娘とかがタイムスリップしてくれたら、お惣菜とか作って待っててくれたのか。


「おかえりなさい、旦那様」とか言って。


 着物をたすき掛けとかしちゃったりして。


 ちょっと待てよ、こっちがいいよ、なんでお前が来ちゃったんだよ、斬新なスリップ事故かよ。


 はー、動けん。



 そのまま倒れていると、武士は米をよそったお椀を、私の口元に持ってきた。


「どうだ、食えそうか?」


 あー……。

 そうだなぁ、今日はもうおかず作るのはいいか。


 でも、漬け物とか海苔とか無かったっけ。


「大家殿を待つ間、腹が減ってな。これぞ手頃と思い、全部食べた」


 武士の手の届かない所に隠しとくべきだったな。


 私の思いなど知る由もなく、武士はニコニコと笑った。


「其が飯を運ぶからな。大家殿はそこで寝ながら食べるがいい。体の言うことを聞いてやるのが、健康の秘訣だぞ」


 じゃあ漬け物食べたいんだけどな!


 だがまあ、寝転がって食べることにした。が、とても食べにくかったので、途中から座り直し、もそもそと白米を食す。


 他に何の味もしない白いご飯は、本当に美味しかった。

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― 新着の感想 ―
[一言] もし嫁さんいたら、今頃どうなってんだろう。武士居なくなって大変そう。
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