そういや七夕
雨が降りまくっている。
「……」
梅雨だ。梅雨である。梅雨ならば仕方ない。
そういやここ数年、七夕に晴れたのを見たことが無いなとぼんやり思った。
織姫と彦星もなぁ、何も梅雨の時期に逢瀬の日を決めなくていいのに。え、何? あれはもともと日本の話じゃない? うるせぇ、こっちは日本の七夕の話をしてるんだ、国際問題に発展させないでくれ。
そういや武士、お前どんな願い事したのよ。
「……」
尋ねると、武士はなんだか微妙な顔をしていた。
「遅すぎないか」
そうかね。
いやだってさ、それどころじゃなかったじゃん。
色々忙しかったりしてさ。
「大家殿が仕事にかまけておられる頃、暇を持て余した某はすーぱーに飾られてある笹を巡っておったぞ」
私、仕事してなくてもお前に時間は割かないけどな。
でもそうか。私も結構見るの好きなんだけどな。何か面白いのあった?
「ううむ……やはり多くはコロナ関係だったな。あとは愛らしき童の字で、願いが書かれてあったりなど」
ほうほう。大きくなったらお花屋さんになりたいー、とかかな。
「いや、りんご」
はい?
「こういちくん。3歳。りんごになりたい、と」
……。
「あ、そこは流石に大人の字であった」
うん、だろうな。
そっか……でも、りんごか。そっかー。
「どうした、大家殿」
なんか失った童心が蘇りそうでな。
涙出そうになってんだよ。
「なぬ!? ならん、ならんぞ! 大家殿がりんごになってしまえば、某は明日からどうやって食っていけばいいというのだ!」
知るかよ。働け。
ん? で、お前結局短冊に何書いたのよ。
「お腹いっぱいトッポが食べたい」
安い願いだな。
「毎日」
贅沢な願いだな。




