板チョコ
はいよ武士ー。
今日のおやつは板チョコだよ。半分こしようねー。
「某が割る!!」
え……うん、まあいいけど。
「ぬんっ」
パキッと音がして板チョコが半分に割れる。
……右手側が、左手側に比べて盛大に大きくなったが。
「……」
チョコと私を見比べて、武士は悩んでいる。多分、どっちを私に寄越そうか考えているのだろう。
「……」
そして、小さい方を差し出してきた。
いや、だろうなとは思ったけどふざけんなよ!!!!
「ま、待ってくれ大家殿! 違うのだ!」
足蹴にしようとした所、何とかチョコだけは死守しようと腹に隠してうずくまる武士が言った。
「チョコがうまく割れなくてな! これを見よという意味で差し出したのだ!」
はいー? チョコー?
ああね、確かにえげつないカーブ描いてるね。
「せっかく割りやすいよう、菓子屋はこうした形を作っているというのに……。某、申し訳なくてな……」
……。
別に、申し訳なく思う必要ねぇよ。
「そうなのか?」
うん。
チョコの溝ってね、別に割るためのものじゃないらしくてさ。
「……」
チョコレートを製造するにあたって、どうしても固まらせる工程が必要になってくるんたけどね。分かるかな、表面積が大きい方が固まりやすいんだよ。
「……」
だから割るためのボコボコじゃないから、気にすることないよ。
「……」
……? なんでお前さっきから黙って……。
あ! さてはお前……!!
「むぐぅぅぅぅ!!!!」
やっぱりな!!!! うつぶせになってチョコ食ってやがった!!!!
「おほやほほははふひひへあふは!!」
あ? 『大家殿は博識であるな!』だと!?
別に博識とかじゃねぇんだよ、Eテレの『デザインあ』見てるだけだよ!!!!
「もぐもぐもぐもぐ!!」
やめろやー!!
 




