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武士がいる  作者: 長埜 恵
2.武士がいる
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カレーから始まる徒然話

 雨がめちゃくちゃ降ったり、やべぇぐらい暑くなったり。

 こうなると、流石の武士とて調子が狂いそうなものである。


「大家殿、かれーおかわり!」


 狂えや。

 平気で炊飯器空にしてくるスタイルやめろ。


「かれーは実に美味であるな! 暑いと尚更うまく感じるぞ!」


 それは分からんでもない。

 でもお前ね、普通その言葉はキャンプとかで言ったりするヤツだからね、クーラーガン効かせの部屋で言うアレじゃないから。まぁ猛暑日にそんなことしてたら熱中症になる気はするけど。


 あー、カレーうまい。


「しかし、こうまで暑いと何者かの策ではないかと疑いたくなるな……」


 ん、何。陰謀論?

 拝聴しようか。


「うむ。……場所は富士山」


 はい嫌な予感。


「その頂にて、ずらりと並ぶは愛らしき猫ども――その数ゆうに十を超える猫らが、こぞって火を焚きサンマを焼いておるのだ」


 へぇ。

 ……へぇー。


「特に暑い日は、二十匹に増える」


 猫が? サンマが?


「どっちも」


 そりゃ確かに暑くもなるな……。


「猫らもな……汗だくになりながら、バッサバッサと団扇でサンマをあおいでおるのだ。そう責めてやるな」


 責めちゃいねぇよ。

 でもなんでそんな場所でサンマ焼いてんの。


「山で食べる食事は美味いからな!」


 そういう理由かよ。

 おい武士、カレーおかわり。


「お主の方が近いではないかー」


 もう私はケツに根が生えてんだ。床から離れねぇ。


「致し方無いのう! その代わり、明日は某の為にサンマを焼くのだぞ!」


 えー。

 あ、よく考えたらサンマ全然旬じゃねぇじゃねぇか! 解散!


「エレキテルの力で売っておらんか」


 知らん……。とりあえず、スーパーに行くだけ行ってみるか……。


「うむ!」


 行くことになった。

 そして、翌日。


「……」


 武士は、魚コーナーを見つめたままじっと動かなかった。

 その視線の先は、勿論――。


「……解凍さんま……」


 うん、サンマだよ。

 ちゃんと間違いなくサンマ。


「解凍……ということは、凍っておったのか……?」


 そうだな。


「……つまりサンマは、氷の中でも泳ぐのか……?」


 ……。


 ……。


 うん。


「なんとぉ!」


 サンマってさ、細身だし口とかちょっと他の魚よりとんがってるじゃん。氷を砕きながら、できた隙間に体をねじ込ませてガンガン進んでいけるんだよ。

 そうして残った屈強なサンマは、旬の時期にやってくる漁師たちの手を逃れる……そして疲れてきた今の時期に、やっと捕らえられるんだ。


「サンマァッ!! もののふよ……お主こそ誠のもののふよ!」


 こいつ面白ぇなぁ。


 こうして敬意を評した武士の意向により、結局サンマは買わずに帰ったのであった。

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― 新着の感想 ―
武士が騙されてるwwwめっちゃ面白www
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