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武士がいる  作者: 長埜 恵
2.武士がいる
156/677

クワガタ

 洗濯物を取り込むべー、とベランダに出て。

 隅っこでひっくり返っているソイツを見つけた。


 ……。


 おーい、武士!! クワガタがいるぜー!!


「なんとぉっ!」


 武士が飛び出てきた。やめろやめろ! ちょっとこのベランダ、ガタがきてんだよ!!


「おお、これは誠に大きなクワガタであるな!」


 だろ。

 なーんでこんな所でひっくり返ってるかねぇ。


「壁にでもぶつかったのではないか」


 天下のクワガタ虫様が? あれかな、実はちょっと飛ぶのが下手とかあるのかな。

 ちょっと調べる。

 ……おー、クワガタって飛ぶの下手なんだな。どこかにとまる時も体当たり式らしい。


「で、失敗してこうなっておると」


 そうっぽいな。


「某、飼いたい!!!!」


 言うと思ったよ。

 子供かよお前。


 え、でも野生のクワガタって飼って良かったっけ? あれじゃん、野生の鳥とかは勝手に飼っちゃダメじゃんか。

 えー……。


「おおーっ! ワキワキしておる! ワキワキしておるぞ!」


 んーと……都道府県ごとにレッドリストが作成されており……。クワガタは……あ、そうか。クワガタっていっても種類があるのか。


「ぬおああああっ! 危ない! 挟まれる所であった!!」


 えー……これなんだ? 種類分からん。助けてGoogleフォト。君に任せた。


「ど、どうすべきか……! しかし、体を元に戻してやったら逃げるやもしれん。某、もう少し見ていたい。ううむ……」


 ……ヒラタクワガタ?

 レッドリストには……あ、載ってるな。そんじゃ飼い方も分からんし、逃してやるか。


「大家殿ーっ!」


 ああもううるっせぇなお前はよ!!

 おい武士、ダンボールにクワガタ入れて近くの公園行くぞ。逃がしてやんなきゃ。


「ぬぅ、はさみん……」


 この短時間で名前つけんな。情を移すな。

 はいはい、はさみんにお別れ言いな。


「また来るがよいぞ!」


 誘うな! ほんとに来ちゃったらどうすんだ!!







 というわけで、逃がしてきたのだが……。


 今私は、スマートフォンの画面に表示された情報を前に頭を抱えていた。


「何だと? ヒラタクワガタの販売……?」


 武士が後ろから覗き込んで、顎に手を当てる。


 ……ああ、そうだよ。ちょっとレアなクワガタだなんて、誰が知ろうものか。

 何なら、一匹何千円かで取引されるようなクワガタ様だなんて。


「……大家殿は、金が絡むとすぐ意見が変わるな」


 あーーーー!! もう一回ベランダに落ちてこねぇかな、はさみん!!

 ほら呼べ! お前友達なんだろ!? 呼べ!


「はさみん、二度と来るでないぞ」


 ああああーーーー!!

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