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武士がいる  作者: 長埜 恵
2.武士がいる
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眼鏡

 私は、あまり視力が良くない。

 良くない、というよりは良くない目があるといった方がいいだろうか。

 左目の視力が1.2なのに対し、右目の視力は0.2である。


 何この目。


 なので普段は片方だけ度が入った眼鏡をかけているのだが、それについて武士に言及されたことがある。


「大家殿……もしやそれは、眼鏡ではないか?」


 お前眼鏡知ってんの?


「知っているも何も、江戸でも売られていたぞ」


 へぇ、そうなんだ。

 てっきり明治時代になってからやってきたもんだと思ってたよ。


「めいじ……?」


 あー、いい、いい。

 それより眼鏡だ。お前は目ぇいいの?


「うむ! よく字が読めるぞ!」


 何よりだ。

 なんだかんだでさ、やっぱ視力はいいのが一番だ。


「……」


 ……。


「……」


 ……会話はひと段落したというのに、武士はそわそわとしていた。何か言いたいことでもあるのだろうか。


「大家殿……もし、良ければなんだが……その眼鏡、少し某に貸してくれんか」


 え? ああ、そんなこと?

 別にいいけど。ほら。


「かたじけない。……んむ!?」


 どうしたの。


「片方だけぼやけるぞ! 左はしかと見えるのに! なんだこの眼鏡は! 壊れておる!」


 壊れてんのは私の目だよ。

 うるせぇなぁ、ほら返せ返せ。


「待て! せめて鏡で顔を見てから……!」


 子供かよ。



 聞けば、江戸時代に眼鏡はあれどやはりそれなりに高価なものだったらしい。かけている姿は多少間抜けだと周りの者は言っていたが、武士自身は常々かけてみたくて堪らなかったそうだ。


「夢が叶った」


 良かったな。

 まあ、そんでも目は大事にしろよ。


「毎日今日もよく頑張ったと労いの言葉をかけるようにしておる」


 大事の仕方が斜め上。

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