春
最近、家に帰るなり本日の報告会が始まる。
「では、始めようぞ」
武士は正座し、ピシッと背筋を伸ばしている。
そして、恭しく一礼をした。
「本日は、ケツフクカミを買って参った」
何? 新手の神様?
あ、違うか。ケツ拭く紙か。トイレットペーパーね。
うん、他は?
「苺とコアラのマーチを買った」
あざっす。
コアラのマーチ安くて美味しいよね。
他は?
「うむ、実はこれが本題なのだが……」
ほう、何があったよ。
「……ツクシが出ておったのだ」
……ツクシ……。
ツクシっすか……。
「ツクシ。二、三本。道端に。ひょっこりと」
へぇ……もうそんな季節なのか。
桜はニュースなんかでよく見るけど、ツクシは無いもんなぁ。
最近久しく見てねぇよ。
「そうだろうと思って、抜いてきた」
おい、いいのかよ。
ツクシさん可哀想じゃねぇか。
「彼らは抜いても抜いてもしぶとく生えるから大丈夫なのである」
はー、こいつらそんなに強い植物なのね。
見習いたいもんだね。うん、可愛い可愛い。久しぶりに見たけどこのフォルム、やっぱり可愛いわー。
「別名、地獄草」
可愛さのかけらもねぇな。
そんなわけで、春である。
うちの同居人は、我が家にトイレットペーパーと春を運んでくれるらしい。
……。
いや、今は色々流行ってんだから、寄り道せず帰ってきなさいよ。
「ぬぅ!」




