VSスーパー
今、私はスーパーにいる。
そして、猛烈に途方に暮れている。
何故かというと――。
――肉まんが、見つからないのである――。
いや、マジで見つからない。パンコーナーも肉コーナーも惣菜コーナーも探した。何なら店内三周はした。それでも見つからない。どこにも見つからない。
何? コロナウイルスって肉まんも品薄にしてんの? 肉まんのどの成分がコロナウイルスを撃退するってデマが流れたの? 皮? 肉と皮のちょうど境の所? あそこ本当美味しいよね。私は肉まんが好きだ。
そんな冗談はさておき、さっぱり見当たらない。どうしてくれよう、今めっちゃくちゃ肉まんの口なのに。
……ああ、こんな時にアイツがいればなぁ。
ちょんまげ頭で、散歩してるからか知らんがやたらとスーパーの商品の並びとかに詳しくて、何なら私より全然ご近所付き合いしている、アイツが――。
「大家殿ー!」
いちゃったー。
こんな場所で手を振りながら走ってくるな! 店内では走らない!
「どうした? 鳩が豆鉄砲を食らったような顔をしておるが」
いやー、ンな事ねぇよ。
それよりさ、ちょうどよかった。お前に探して欲しいもんがあるんだ。
店三周して全然見つかんなくてさー。
「ううむ、かなり難題のようだな。うむ、任されたぞ!」
あんがと。
その商品ってのが、肉まんなんだけどね。
武士、どこにあるか分かる?
「ふむ、そのまま考えると“中華こぉなぁ”にあると某は思うが……」
……。
……。
「そこは大家殿とて真っ先に探しておるだろうしな。ならば冷凍食品などは……」
中華コーナー。
「うん?」
うん、ありがとう。助かったよ、武士。もう帰っていいよ。
「なぬ……? もしや大家殿、中華こぉなぁを見ていなかったと……?」
そんなわけねぇだろ、見てた見てた。五百回は見た。
「嘘をつくな! ま、まことなのか!? 大家殿はどこまで物を探すのが不得手であるのだ!?」
うるせぇなぁ。肉まんはほぼパンだろ。もしくは中身肉なんだから肉コーナーだろ。
「それは怒られるぞ大家殿!」
あああうるせぇうるせぇ。肉まん食わすぞ。
そんなわけで、無事に肉まんは見つかった。
私はいつか、スーパーの達人になりたい。そう思うが、この年まで生きてこれでは、もう無理かもしれないと思うのである。




