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武士がいる  作者: 長埜 恵
2.武士がいる
138/677

柔軟剤

 笑わないで聞いてほしい。


 私は先日、生まれて初めて柔軟剤とやらを使った。


 事の発端は、洗濯機を覗き込んだら白い紙屑が一面服にこびりついていたことである。


「某ではない! 某ではござらん! 某は決してマスクを入れたまま洗濯してなど……!」


 犯人探しも終わり、私を背に乗せて腕立て三十回(罰)をする武士の上で腕組みして考える。どうしたものか、洗濯物。

 すると、開けていた窓越しに秋澤さんが教えてくれたのだ。


 ――ティッシュなどがくずくずにくっついた洗濯物は、柔軟剤で洗濯したら取れるよ、と。


 マジか。マジですか秋澤さん。

 私は武士の背中から降り、早速試そうとした。


 が、残念なことに我が家には柔軟剤が無い。

 いや洗剤に柔軟剤も入ってるみたいだからね、いいかなーとスルーしてたんですよ。


 そうしたら秋澤さんが貸してくれた。本当にいい人である。


 で、やってみた。柔軟剤を入れ、すすぎは一回に設定する。

 武士の背中の上で待つこと数分――。


 見事、だいぶ綺麗になっていた。


 まあまだ少しこびりついてはいるから、取り出してバサバサしてやる必要はあるのだが。

 しかしそれを抜きにしてもばっちりである。すげぇや秋澤さん。すげぇや柔軟剤。


 だが、驚きはそこで終わらなかった。


「ふっかふかであるぞ!!」


 そう――乾いた洗濯物が、それはそれはふっかふかになっていたのだ。


 柔軟剤なんだからそりゃそうだろなんて言わないで欲しい。こちとら生まれて初めて柔軟剤を使った、柔軟剤原民なのである。本当にふかふかだった。マジでふかふかだった。


 その日は、そのまま柔軟剤を買いに行った。


「これぞ雨降って地固まる、であるな! 某もマスクを入れた甲斐があったというものだ!」


 そして調子に乗る武士には、腕ひしぎ逆十字固めをくらわせておいた。手間であることに変わりはねぇんだ。次から気をつけてな。

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