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武士がいる  作者: 長埜 恵
2.武士がいる
133/677

とにかくおにぎり

 武士の前に、大量のご飯を盛って置く。

 昼飯は何かとワクワクしていた武士は、それを見て完全に固まった。


 そんな武士に向かって、私はドドンと言い放つ。


 ――今日の昼ごはんは、“とにかくおにぎり”です!


「とにかくおにぎり?」


 はい。


「なんだ、それは」


 まず、好きな具を用意します。

 梅干し、シャケ、卵焼き、ツナマヨ、昆布、唐揚げ、辛子明太子、クリームチーズ。


「うむ」


 好きな物を好きなだけ、ラップの上に乗せたご飯の上に乗せます。


「うむ」


 ラップごと丸めます。


「うむ」


 完成。


「……」


 完成。


「……好きな具をどんぶりにすればいいだけでは」


 バッカお前ほんとバカ。

 おにぎりだからいいんだろうがよ、分かんねぇのかこのロマンが。

 お前思ったことない? 「このおにぎりご飯ばっかりで全然具にたどりつかないなー」って。

 無い?

 私はあるよ。

 しかしこの“とにかくおにぎり”は、そんな哀しい思い出を丸ごと上書き保存してくれる。


「……」


 可哀想なものを見る目でこっちを見るな!

 どんぐり(シルバニアファミリー・リス)とにぼし(シルバニアファミリー・ねこ)を寄せてくるな! 

 武士なりの不器用な慰め方をするな! やめろ!


 いいからやってみろって。

 マジ楽しいから。


 そう言うと、武士は渋々具を物色し始めた。


「……某は、卵焼きとつなまよを……」


 ああ、いいね。

 私は明太子とクリームチーズをぶちこむよ。


「これを……らっぷ飯の上に……」


 そうそう。

 で、くるっと丸める。


「む! なんと、下に海苔も敷いておったのか!」


 気付いたようだな、武士よ……。

 こうすることで、手を汚さずにおにぎりを作れるという寸法だ。


「大家殿は、実に賢き男よ」


 だろ。

 まぁネットの知識だけど。


 こうして武士の目の前に、おにぎりが一個できあがった。丁寧に両手を合わせ、頭を下げる。


「いただきます」


 はい、いただきます。


「……!」


 うん。

 どっすか。


「……これは……! 馬鹿な、こんな素晴らしきおにぎりがあって良いのか……!?」


 良いのです。

 よく噛んで食べるのです。


「しかし……どこを食べても、具に当たるぞ! 米からはみ出た卵焼きも実に道徳に反しておる!」


 何言っちゃってんの。

 ここはもう法の手の届かない場所――いわば食のスラム街さ。私達にできることは、ただ与えられた食材でいかに多くの宇宙を見ることができるかのみ……。


「何を言っておるのだ」


 ほんとにな。


 あーーー、すっげ美味い。幸せ。


「よし! 某、次は梅干しと昆布を試すぞ! 梅干しは……二個入れてしまう!」


 おーっと分かってきたじゃねぇか、武士さんよぉ!

 それじゃあ私は唐揚げに塩胡椒とマヨネーズをかけてしまおうかなぁ!?


「背徳的である! こんな真昼間から、そのような……!」


 ついでにファンタ(オレンジ)も開けちゃうぜぇ!?


「おおおおお!!」





 まあ、そんな休日でした。

 三連休? なんだよそれ知るかよ私は最後の一日は仕事で大阪でした。

 おやすみなさい。

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― 新着の感想 ―
美味しそ~~~~
[良い点] この二人、いつも「小さな幸せを見つけるのがうまいなあ」と思います。 [一言] 連休明けのやさぐれた気持ちに癒しをいただきました。 疲れた心に一日一武士。
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