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武士がいる  作者: 長埜 恵
2.武士がいる
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味噌汁

 武士がまだ来たばかりだった頃の話。


「大家殿、流石にそれは人としてどうかと思う」


 向かいに座る武士の一言に、私は神妙に頷く。

 コイツの言い分は、正しい。間違っているはずもない。


 何故なら、私もまあまあ突っ込まれるかなと思っていたのだ。


 武士は、ため息と共に私の前に味噌汁を差し出した。


「……何故、大家殿は味噌汁の具だけ食べて、汁を残すのだ」


 ですよねー。


「いや、おかしいであろう。最初は気のせいかと思っていたのだが、やはり何度見ても汁だけ残っておる」


 ……うん。

 あのね、ほら。

 私、ラーメンとかうどんでも、汁は残すんだよ。


「ほう」


 それと一緒かな、と。


「……しかし、あれは麺が主役であろう」


 ……。


「大家殿は、“こーんすーぷ”のこーんだけ食べて、後は残すのか?」


 ……。


 ……残さないです……。


「うむ」


 ……。


「味噌汁は、具に味噌味をつける汁ではない。主役なのだ」


 ……返す言葉もありません……。




 そんなわけで、その後はちゃんと味噌汁を飲むことになった。

 味噌汁美味しいです。味噌汁に罪は無い。味噌汁最高。


 しかし、今思えば武士に面と向かって行動を変えられたのは、あれが初めてであった。武士が来なければ私は今も味噌汁の具だけ食べてたんだろうな、と思うと、味噌屋さんに申し訳ない気持ちがしてくるのである。

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