バレンタイン
バレンタインですか?
最高のイベントじゃないですか。
この日に向けて、こぞって美味しいチョコが店頭に並ぶんですよ。
まあ買えるかどうかは別として。
懐事情は甘くないけど。
そんなわけで、私は安売りされていたいつものチョコを大量買いして帰ってきたのである。
「うむ、きのこの里とたけのこの山は実に美味いな……」
逆だぞー。
きのこの山とたけのこの里だぞー。
やめろよー、これそれなりに大規模な対立が起きてるやつなんだからさー。
「対立? きのことたけのこがか?」
そうそう。
「戦をするのか?」
インターネット界隈ではよくしているように見受けられる。
「しかし、きのこ殿にもたけのこ殿にも手足は無いではないか」
ああー、違う違う。本人(?)達が戦うんじゃないんだ。
彼らを推す人達が戦うんだよ。
「……」
何。
「無益にもほどがあるのではないか?」
うるせぇマジレスすんじゃねぇ。
こういうのはノリだ。「ねぇアナタ、この二つのチョコどっちが好き?」「オレはたけのこ」「マジ? 私きのこ」「嘘やん、別れよ」「別れよ」みたいな感じでライトにカップルが破局する為にあるんだ。
「大家殿がやさぐれておる」
んなこたねぇよ。
ああー、可愛い女の子にチョコ贈られてぇなー。
「そのことなのだが、そもそもその“ばるたん”というのは一体何なのだ」
バルタンはウルトラマンの敵キャラじゃねぇかな。
バレンタインはね、女の子が好きな男の子にチョコを贈る日だよ。
「ほぅ」
つまり、私もお前も関係ナッシング。諦めて叩き売られてたチョコで共に腹を満たそうぜ。
「……」
……どしたん。
「……いや、甘かったはずのたけのこが、急にしょっぱくなってな……」
……ああ。
「うむ……」
……なんか、ごめんな……。
「気にするな……。江戸には、そのような文化が無かった。今思えば、恵まれていたのであるな……」
いやそこまではわかんねぇけど。
でも江戸にはチョコ自体無かっただろ。
「そうだな! ここに来られて良かったぞ!」
あ、元気になった。
つーかお前、私の分のきのこは?
「美味かった!」
二箱全部食いやがったのか。
よし、そこに正座しなさい武士さん。お説教ですよ。
「ぬうううううう!」
こんな感じのバレンタインであった。
そんなわけで、もしこれを読んでる人で私のことを好きだって人がいたらチョコをください。できるだけ美人なお姉さんがいいです。よろしくお願いします。




