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武士がいる  作者: 長埜 恵
2.武士がいる
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結婚式に行ってきた

 友人の結婚式に出ていました。


 この年になるとね、周りでパタパタと結婚し出すんだよ。

 何なら子供までいたりする。高校卒業と同時に結婚した元クラスメイトの子供なんか、もう小学生になるらしい。


 私が大学行って、社会人になって、武士と暮らす間に。


 速い。怖い。時の流れが怖い。


「む? 大家殿は時の流れに取り残されておる側だというのに、何を怯える必要があるのだ?」


 そしてこれは、引き出物のバームクーヘンを貪り食う武士の余計な一言である。


 うるせぇな。取り残されているからこそ時間の流れがよく見えるんだよ。


 いやなぁ、子供が欲しいわけでも、お嫁さんが欲しいわけでもないんだよな。

 でもやっぱりこう、家族を得ている人を見ると「世間的にはこうあるべきなんだよな」と思っちゃうわけでさ。


「それは大家殿の知見が狭いからである! 大家殿の世界が広がれば、その分世間とやらも広がるであろうからな!」


 ああ、確かに。

 もし結婚する人より武士が家にタイムスリップしてくる人の方が多くなったら、そうなるのかな。


「え、お宅も?」

「そうなんだよ、ついに来たわ」

「うわー、大変ですね」

「ほんとほんと。うちの武士めっちゃ頑固でマジ毎日和食なんだわ」

「わーありますよね、そういうこだわり。うちも和式便所に直さなきゃいけなくなって」


 そんな会話が、結婚式や同窓会で蔓延するのである。中にはどこに行くにも武士を連れて行ったり、あえて可愛い服を着せてみたり。あまつさえペット禁止の張り紙の横に、武士禁止の張り紙も出てきたりなんかして……。


 ……。


 私は武士を何だと思ってるんだろう。


「むむ、大家殿、これはなんだ! この白き装いは! もしや花魁の婚礼であったのか!?」


 ウェディングドレスっつーんだわソレ。


 まあ、あれだな。色々とやかましいけど、うちの武士はそこまで手がかかるヤツでもないしな。

 もう少し、時の流れに取り残されてコイツと暮らしてみるとするか。


 だが、武士を追い出して五秒で彼女ができるなら、私は多分追い出す。

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