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武士がいる  作者: 長埜 恵
2.武士がいる
124/677

節分

「鬼はああああああ外おおおおお!!」


 武士の高らかな声が響く。しかし、肝心の豆は手の中から出てこない。


 どこに消えたのかというと。


 全部、武士の口の中に入っている。


「もぐもぐもぐ、むううううもふぅぅううう!!」


 ……福は内って言いたいのかな。

 とりあえず全部、武士の口の中に入っている。


「もぐもぐもぐもぐ……」


 ……。


 いっぱい豆が食べられて、嬉しそうだ。


 やがてそれを全て飲み込んだ武士は、私に向き直った。


「大家殿もいかがか!?」


 え、私?


 いやいいよ。納豆食ってるし。


「しかし、鬼を払わねばならぬぞ!」


 払うっつったってもう、お前だって食ってんじゃん。

 なんで? なんで食うの? 今頃お前の腹の中で鬼と福がマッチングしちゃってるよ。「あれ? おたくも?」っつって。だいぶ気まずいと思うけど。


「問題無い。某の腹は、悪しきものだけを溶かすことができる」


 その理屈で言うと、今からお前が手を出そうとしてる恵方巻も悪しきものになるんじゃないか?


「……福と恵方巻は、消化吸収し我がものとすることができる!」


 どう違うの?


 つーか言ってることが完全に悪の親玉だな?


「……」


 あ、恵方巻食い始めた。そんで食い始めてから恵方を探してるな?

 こっち見んな。


 ……。


 ……今年の恵方は、こっち。西南西だよ。


「……!」


 うん、お礼はいいから、食べな。


 途中喉に詰まって目を白黒させていたが、何とか全部食べきっていた。

 うんうん、やっぱりイベントごとって楽しいよね。お店にも山のように色んな種類の恵方巻が並ぶしさ。

 廃棄されるのは確かに問題だけど、あのお祭り感や特別感は私好きなんだ。


 ……ところで近所のスーパー、カリフォルニアロールの恵方巻はもうやめたのかな。

 前に見つけて半笑いで食べて、びっくりするぐらい旨くてまた食べたいと思ったら次の年から消えてたんだよな。マジで美味しかったのに。


 やはり、こういう時にはお客様コメントを残すべきだな。


「おかわり!」


 ところで恵方巻って、おかわりしたら福も増し増しになるのだろうか。

 二本目を無言で食べる武士を眺めながら、私はそんなことを思うのである。

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― 新着の感想 ―
[一言] >「問題無い。某の腹は、悪しきものだけを溶かすことができる」 >「……福と恵方巻は、消化吸収し我がものとすることができる!」 光と闇が合わさり最強に見える 逆に大家も食うと財布が空になって…
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