甥っ子
【二歳児と散歩】
二歳
どんぐりとてんとう虫だけは見逃さない
二歳
無数のどんぐりを母の手に握り込ませてくる
二歳
五秒後にはこのどんぐりのことを忘れている
二歳
落ちてた大きめの枝に大興奮
二歳
そっちは崖だから行けないと何度言ったら
二歳
ねえこのどんぐり捨てていい?
二歳
一時間お散歩したらもう十分じゃないかな
二歳
だからそこは崖だっつってるだろ
姉が、一人いるのだが。
その姉から突然、こんなLINEが送られてきた。
何これ、詩?
「む、オナゴから文を貰ったのか!?」
おうおう、一丁前に武士が私をからかってきたぜ?
違うよ、姉ちゃんだよ。
前に言わなかったっけ、私四つ年上の姉がいるんだ。
「ぬ、姉上殿がいるのか!」
うん。
専業主婦で、二歳の男の子を育ててるんだけどな。
たまにこうして連絡をくれんだ。でも今日のこれ何。
「歩くのが好きな童であるのだな! なんとよきことであるか」
あ、写真も送られてきた。
かわいい顔してんな、流石私の甥っ子。
「ほほう、この子が大家殿の甥っ子であるのか」
そうそう、かわいいだろ。
「うむ、利発そうな顔をしておるな!」
そうなんだよ。
なんだろうね、叔父の贔屓目かな? 他の子よりも顔がいいように思えてさ。
「ああ、それはよく分かるぞ。某も親戚の赤子を見た時には、同じことを思ったものだ」
すげぇよなぁ。
この子が三年前まではこの世界にいなかったなんて、信じられねぇや。
生まれてくるってすごい。
「うむ」
そんで、ついこの間までばぶばぶ言って這いまわってたと思ってたのに……。
「ああ……」
時間の流れの速さも、信じられねぇや……。
「ああ……」
とりあえず、「かわいい」と返信しておくのである。
ついでに「お疲れ様」と。
今度実家帰った時、甘いもの持って立ち寄るからね姉ちゃん。




