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武士がいる  作者: 長埜 恵
2.武士がいる
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どんぐりとにぼしのごはん

「どんぐり殿とにぼし殿も、飯が食えたら良いのにな」


 ある日、武士がシルバニアファミリーのリスと猫をお布団に寝かしつけながら、そんなことを言った。

 え、飯?

 お前これ以上我が家の家計圧迫して何が楽しいの?


「大家殿の言葉は夢が無いな」


 うるせぇ、こちとら最近ちょっとオカンじみてきた自覚があんだよ。つーかあれだ、昨日かめはめ波撃ちてぇっつったのは夢と希望に溢れてるだろ。

 そんで何? ご飯?

 え、食わせるの? コイツらに?


「食卓はあるのに、肝心のメシが無い。これはあまりにも哀れだと思ってな」


 あー、そう?

 まあ確かに、ちょっと味気ないかもな。


 ……うーん……。


 『シルバニアファミリー ご飯』で検索……。


 あ、この料理セットってヤツかな。それかランチセット? なんだ、まあまああるじゃん。


 いや、まあまあ……どころか……。


 多い、な……。


「大家殿?」


 おう、ちょっとこっち来んなよ。

 今私は考えてる。

 ……えー……どうすっかな。これ全部揃えるとなると……置く場所……金……んんん。


 んんんんんんん。


 そんなわけで、夜。


「大家殿、それは?」


 ひゃっきーん。


「ほう」


 お土産。


「ぬぅ?」


 ビニール袋を受け取った武士がガサゴソ中を改める。そして、パッとこちらに顔を向けた。


「これは……チビ達のご飯ではないか!!」


 おう。

 取り急ぎってヤツな。


 そう言うと、武士は床に出して一つ一つ改め始めた。


「皿もある! 湯呑みも!」


 それすげぇよなー。ティーセットってやつだ。


「飯もこんなに! ……なんだこれは。柔らかいが……」


 あ、それ消しゴムね。料理消しゴム。

 見た目可愛いから買ってみたんだ。


「ぬぬぅ! パン!」


 それ後ろが磁石になってんの。鉄製のヤツならくっつく。


「大家殿……大家殿ぉ」


 武士がプルプルと震えている。

 なんだ、どうした。


「有難い、有難いことよ……! 某のチビ達の為に、こんな良きものを……!!」


 お、おう。

 喜んでもらえてよかったよ。


「願わくば“ランチセット”や“冷蔵庫セット”、“家具料理セット”、“おいしい朝食セット”であれと思ったが……!」


 あ、よかった。一瞬何の捻りもなくほのぼのオチに行くのかと思ったわ。ちゃんといつものお前だった。

 ってかちゃんと目をつけてたんじゃねぇか。嫌なヤツだなお前。


「しかし! これはこれで某は嬉しいぞ! 何故ならこれはこれで美味そうであるし、これはこれで可愛いからだ!」


 これはこれでってうるせぇな。

 チビ達の食費に割いたら、私らの食うもんが無くなるんだよ。


「某らの子ではないか! 育児放棄であるぞ!」


 あー、ツッコミ所が多いなぁ面倒くせぇ。

 まず、お前の子かもしれねぇが私の子ではない。育児放棄とかそういう概念ねぇんだよ。あと腹痛めて産んだ子っつーか、懐痛めて買った子だそいつらは。

 ……いや、ごめん、なんでもない。そうかこれサンタ殿から貰った設定だったわ。クソ、ありがたみが私に来ない。


 んもー。


 とはいえ、武士は嬉々としてどんぐりとにぼしに料理を振る舞っていた。何種類か買っているので、そうすぐマンネリすることは無いだろう。


 ……。


 そういやコイツ器用なんだから、粘土とか与えたら勝手にそれっぽいものを作るんじゃ……?


「大家殿! どんぐり殿とにぼし殿には某が飯を与えておいた! 某にも頼むぞ!」


 はーいよー。


 そんなわけで、今日のご飯はチャーハンである。どんぐりとにぼしと一緒だな。

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