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武士がいる  作者: 長埜 恵
2.武士がいる
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服とやらを

 武士の服を買いに行かねばならない。


 そう思い、武士をショッピングモールに連れ出した。

 勿論、ちょんまげ隠しにニット帽を被せることは忘れない。これも面倒だから、いい加減解けばいいのに。


 そんなことを伝えると、武士は憮然として言った。


「某は武士だからな。いつ如何なる時においても、主君に呼ばれれば兜をかぶらねばならん。故に、髷を解くことは相成らんのだ」


 なんでもいいが、毎回なかなか乾かない髷にドライヤーを長時間あて、火傷しかけるのはやめてほしい。



 話が逸れたが、ショッピングモールである。


 武士は、居並ぶ華やかなアパレルショップに想像通り大層はしゃいでいた。


「大家殿! あの歯が妙に後ろに下がった下駄は何ぞ! 色もテラテラとしており……あれではまともに歩けぬではないか!」


「大家殿! 何故あの着物は腰から下しか無いのだ! その上、丈も短いときた……。現代のおなごはあれだけで外に出るのか!? なんと!!」


「大家殿! あの首に巻いた布は何と申すのだ! あれさえあれば、いつでも網漁ができるぞ! いや、某の友人に川釣りが趣味の者がいてだな……」


「大家殿! 大家殿!」


 うるせぇな。


 口に芋の天ぷらを押し込み、ジャージの襟を引っ掴んで、私は男物が置いてあるショップへと入った。


 とはいえ、武士は現代日本人の基準では小柄なので、サイズを探すのにも一苦労である。ようやく見つけても金額が高過ぎたりと、なかなか「これ」というものが無い。


 しかし、そうやって店を数件回った後、武士はとある服の前でピタリと足を止めた。


「大家殿、この愛らしきものは何ぞ」


 いわゆるコラボTシャツというヤツである。

 今回はリラックマとのコラボで、かわいらしいクマがそこかしこに置かれたシャツの中で寝転がっていた。


「某、これがいい」


 コラボTシャツ、案外安いんだな。



 そういうわけで、今私の隣ではリラックマのTシャツを着たちょんまげがバナナを貪っている。どんな組み合わせだよ。


 そして、ここまで書いてズボン類を買ってないことに気づいたのである。

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― 新着の感想 ―
[良い点] 第12話の時点まで読ませて頂きましたが、武士さんが可愛くて癒されますw これはドリルもシャツも買ってあげたくなりますね…… 赤きものって厨二な響きなのにトマトだったりと、色々センスを感じて…
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