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武士がいる  作者: 長埜 恵
2.武士がいる
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毛布

 イオンで売ってる毛布がね、安くてフワフワで暖かくて軽くて最高なんですよ。

 あとしまむらもいい。安くて暖かいのが手に入る。

 勿論超ブランド品ってのもそれはそれでいいんですよ。でも幅広い消費者にも手が届くよう、色んな人達が集まって知恵と技術を出し合って安価で開発してくれた商品なんて、つくづく頭が下がる思いがするんです。本当にありがたい。


 まあ、なんでこんな話をしているのかというと。


 武士が、私の毛布にくるまったまま出てこなくてなったのである。


「……」


 おーい、武士ー。


 朝ごはんだぞー。


「……」


 無視である。なんだコイツ。


「……ぬくい……ふかふか……」


 うん、そうだな。

 私の毛布、イオンのやつだからな。


「……某のとは違う……」


 うん。

 お前の毛布、私が随分前に買った重たい割にそんな暖かくないヤツだからな。


「……不公平である……」


 もぞもぞと不満を述べている。


 うーん。


 今年は暖冬だからなぁ。

 がっつり冬支度しなくても乗り切れるだろうと思ってた節は否めない。


 今の毛布で十分だろー。

 かーえーせーよー。


「嫌でござる。嫌でござる」


 お前普段「ござる」って言わねぇだろがよー。

 生意気にしがみついてんじゃねぇよー。


「これは某のものでござる」


 マジで離れねぇぇぇぇぇぇ!


 ……。


 ……。


「某の家でござる」


 ……わかったよ……。


 買やぁいいんだろ買やぁ……。


 そう呟いた瞬間、武士が毛布の中から顔を出した。


「まことか!」


 おー。

 こんなに冬が暖かくなかったら買ってやろうと思ってたし、別にそんな高くないし、いいよ。


「かたじけない!」


 そうして亀のようにまた引っ込む武士である。

 なんだなんだと見ていると、ぽとぽとと何かが落とされた。


 何これ。チロルチョコ?


「最近あちこちで掃き掃除などの手伝いをしておってな。無論見返りが欲しくてしておるわけではないのだが、時々こうして菓子をもらえるのだ」


 へぇー。


「ふわふわの礼である」


 あ、牛のヤツもあるじゃん。

 私これ好きなんだよ。ありがとありがと。

 つーかそんなことしてたのね、お前。人の役に立って偉いねぇ。


 じゃあ今日、帰りにイオン寄って買ってくるわ。

 何色がいい?


「桃色で頼もう!」


 可愛いチョイスしやがってお前。



 こうして、我が家に新しい毛布がやってきた。

 武士は大変気に入ったようである。時々、武士と一緒にたこ助 (ぬいぐるみ)とどんぐり(シルバニアファミリーのリス)とにぼし(シルバニアファミリーの猫)が毛布の端っこで寝ているのを見る。

 しかし新品の毛布のふかふかっぷりったらないね。私も新しく買い替えようかなぁ。

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― 新着の感想 ―
[良い点] 武士はととろのような妖怪の類いなのやもしれぬ。 おちゃめで良いぞ。
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