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武士がいる  作者: 長埜 恵
2.武士がいる
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元カノの話

「大家殿は嫁を貰わぬのか?」


 ――おぅふ。


 朝からとんでもなく破壊力の高い質問をされ、私の鳩尾が痛んだ。

 やめなさい、何の前置きもなくそういうこと聞くの。


「某も人のことは言えぬが、大家殿もいい年だろう。そろそろ身を固めてはどうだ」


 身を固めたらまず間違いなく私はお前を追い出すんだけど、それを分かってて言ってるんだよな? 覚悟の上だよな?


 まぁ彼女すらいないんですけどね!


「某は知っておるぞ。この時代では大規模なお見合いが催されているのだろう? それに出てみてはいかがか」


 ……あー、婚活パーティーのこと?


 二回ほど出てみたけど面倒くさかったんだよな。

 参加したヤツが悪かったのかもだけど、もうなんかすげぇテンションとかアゲアゲでさ。ノリについていけなくてそこからもう参加してない。


「むう……もったいないな。この時代は身分も平等であり、自由に恋ができるのだろう? 大家殿にも、かつてそういった者はおらんかったのか?」


 あ、聞いちゃう? へえー、聞いちゃう?

 言っとくけどちょっと面白いよ。


「ぬ、面白いとな。ぜひ聞こう」


 うん、じゃあ教えてやる。


 高校生の時ね、彼女ができたんだよ。


「ほう」


 なんか好きとかはよく分からなかったけど、別にその子のこと嫌いじゃなかったし、付き合うことにしたのね。で、結構その子とは仲良くやってたと思うんだけど。


「うむうむ」


 ある日浮気されまして。


「おお」


 しかもね、相手が私の入ってた部活の同級生だったんだよ。あちゃーやられちゃったーと思ったけど、なんつーか、彼女が友達に告白してOKもらったから私をフった、みたいな感じだったから、大っぴらに浮気とも責められず。まあ元より責めるつもりも無かったってのもあって。


「ふんふん」


 それなりにショック受けつつも、そのまま別れたんだよ。


「ぬう……」


 で、一ヶ月後。


 元カノがフられた。


「おお?」


 いやー、元カノが私の所に来て「あの時はあなたを試したんだ、愛の深さを知りたかったんだ」と言った時にはもう目が点になったよね。当然受け入れるはずもなく、バイバイしたんだけど。


「それは少し胸がすく思いがするな」


 ああ、そう?


「しかしそうなってくると気になるのがご友人殿についてだな。かの者は大家殿と女が恋仲であると知っておったのだろう? なれば何故、引き裂くような真似をしておいてまで別れを切り出したのだ」


 うん、私も気になったからね、聞いてみたんだよ。

 そしたらさ、そいつ好きなヤツがいるって言うんだ。


「ふむ」


 コイツ不誠実な男だなー、って思いながら誰なのか尋ねるじゃん。


「うむ」


 そしたら、私を指差してきた。


「…………」


 ……。


「…………うん?」


 うん。


「……大家殿のことか?」


 うん。


 すげぇ綺麗な三角関係ができてたんだな、と思ったよ。


「……それは……面白いな……」


 だろ。

 丁重にお断りしたんだけど。


「おお……まあ、そうだな」


 拗れ倒すことになるからね。

 いやぁ、本当にこんなことってあるんだな。


「……大家殿も、なかなか修羅場をくぐっておったのだな」


 まぁね。

 だからかな。羨みはするけど、積極的に恋愛をしたいとも思わないんだよなぁ。


「然り。あれは無理にするものではないな」


 然り然り。

 そういやお前も許嫁に逃げられてたな。

 お互いなんか色々あるよね。でもそれが人生だな。ドンマイドンマイ。

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― 新着の感想 ―
[一言] 大家→彼女 ↑   ↓   友人 大家は元カノにそこまで思い入れなかっただろうけど、すごい修羅場。
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