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武士がいる  作者: 長埜 恵
2.武士がいる
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カビ

 敷布団のシーツがカビていた。


 あちゃー、と思った。いや、前々から気付いてはいたんだよ。でも埃かと思ってたんだ。黒い靴下とか履くし。

 もうね、全然カビだった。バリバリカビ。かびるんるん。


「咳の原因はそれではないのか」


 そして武士のこのダメ出しである。

 ぐうの音も出ねぇな。


 でもそう言う武士はどうなのよ。武士をどかし、敷布団をひっくり返してみた。


 ……よーく見たら。


 ものすごくよーく見たら、黒い点々があった。


 おいカビとるぞ、武士。


「許容範囲だ」


 カビに許容範囲とかねぇんだよ。

 まいっか。カビてるのがシーツとかだけなら、漂白すりゃあ何とか……。


 私の布団のシーツを剥がしてみる。うん、まあ綺麗なもんだ。

 武士を見ると、私を真似してシーツを剥がしていた。うんうん、言わなくてもちゃんと確認してくれてるな、おりこうさんおりこうさ……。


「ぬあああああああああ!!」


 ああああああああああああ!?


 武士の雄叫びに驚き、振り返る。

 青ざめた武士の手に掴まれたその敷布団は――。


 ――武士の寝床は、かびるんるんの聖地になっていた。






 そんなわけでニトリに来た。


「大家殿は! 家に! おれ!」


 ダメだってお前一人で買い物とか! しかもニトリだぜ! 絶対いらねぇもの買うだろお前ゲホゴホゲホゲホ


「ほらな! せめて今日明日は家で養生せねばならぬ体なのだ!」


 いやいやそんなことねぇよゲホゲホ。

 これ咳喘息(状況証拠のみ)だから! 他人には移らねぇからエホエホ。


「ならぬならぬ! 某に任せろ! 某が最高の布団を選んできてやろう!」


 だーかーらー! それが全然信用できねぇっつってんだよゲホゴホエフエフ!!




 そんなわけで、二人でニトリに来た。


「ここはいつ来ても住めそうだな……!」


 武士の感想に全面同意である。ここはホームセンターや無印良品と並んで、ゾンビに街を襲撃された時に一時籠城したい場所だと思う。いや、食料品が無いからきついか……?


 とりあえず、アレコレ見て回りたい武士の首根っこを引っ掴んで、布団コーナーに行く。相変わらず手頃な価格で色々あるもんだ。ほんとありがたい。


 その中で、一番おすすめされていた敷布団をカートに乗せる。機能性とかよく分からないので、結局店員さんが勧めるものを買ってしまう。それが私。思考停止だの何だの言われるかもしれないが、消費者としては望むべき姿ではないか?


「大家殿! この枕なぞふっかふかだぞ! 永遠に手が沈んでいく!」


 おー、でも枕カビてないからさー。

 つーか買った所でそのちょんまげだと使えねぇだろ。


「大家殿! この湯呑みを見ろ! 底がキラキラして……! キラキラしておる!」


 おー、でもうちのコップカビてないからさー。

 あ、これいいね。プラスチックだから割れないのか。


「大家殿! 椅子が沈むぞー……!」


 ニトリに来たらソファー座っちゃうよなぁー!

 もう買おっかなぁ。でもただでさえ狭い部屋がますます狭くなるし。

 うーん……。


 んー……。


 ……いやいや、敷布団買いに来たんだよ。買いません。買うとしても「買う!」って決めてから来るよ。


 なので、無事敷布団とコップを手に入れて帰ってきた。


「キラキラ! キラキラだぞ!」


 ……え、コップ?

 コップはいいんだよ。割れにくいし、ほら武士も喜んでるし。


「水を入れたら……? おおおおー!!」


 うん。

 ニトリは魔境だからさ……。

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― 新着の感想 ―
[一言] ホームセンターとかも回ってるだけで飽きないの良いよね。
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