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武士がいる  作者: 長埜 恵
2.武士がいる
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咳が止まらん

 年明けの病院ほど緊迫感のあるもの無くない?


 長期休み中に熟成された風邪やインフルエンザが一堂に会するのである。少なくとも治りかけの風邪っぴきが行くべきでない。下手すりゃ新しい風邪を「つまらないものですがー」っつってもらっちゃう。やめてやめて。いらないいらない。


 というのもね、年明け早々風邪ひいて、そんで全体的な症状は緩和したものの、どうも咳が止まらないんですよ。終始ゴホゴホやってます。

 で、やっぱこれって同居人からしたらちょっと気になるようで。


「大家殿、ここはやはりお医者殿に診てもらわねばならんぞ。確かに風邪ならば休んでおれば良いが、大家殿は医者ではないのだ。咳が続くなら診てもらう方がいい」


 と、いつぞや言われたようなことをまた言われたのである。

 大丈夫だって。もーこれ放っとけば治るんだって。

 そう返して一つ咳をした所、武士はスッと立ち上がってスタスタ部屋の中を歩き出した。


「……」


 え、どういうこと?


 混乱している内に、また咳が出る。今度は二回。すると武士はさっきより長めに歩いた。


「……」


 こっちを見るな。何だよ。


「大家殿がお医者に行かぬなら、大家殿がゴホッと咳をするたび、某は五歩歩くことにした」


 なんだよそれ、鬱陶しい……


 ゴホゴホゴホゴホ!


「ぬううううううう」


 ゴホゴホ。


「ううううううう」


 やめろ! 部屋の埃が舞うだ……ゴホゴホ。


「うううううううう」


 そんなわけで、病院に来ている。

 なんだよアイツ、疫病神なの?


 武士もついてこようとしたが、流石にこのタイミングで健康体のヤツを連れて来る勇気は無かった。

 「ミカンを山のように食べておるから大丈夫だ!」とかほざいていたが、ミカンとインフルエンザが戦ったらそれなりにインフルの方が勝つと思う。


 つーかお前、血圧測りたいだけだろ!

 腕ギューされるのが面白かっただけだろ!


 ヤツは足手まといになるから置いてきた。


 そして診察である。


 結果。


 風邪。


 知ってた!!


 とりあえず、約束通り病院には行ったので“武士のゴホ五歩大作戦”は幕を閉じることとなった。武士は満足げだが、もうほんと二度とやるんじゃねぇと思う。





 そして記念すべき百話目なのに、こんな内容でごめんな、武士。

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― 新着の感想 ―
[良い点] ゴホ五歩大作戦。なんて面白い発想なの! 武士可愛いです……。 [一言] 100話おめでとうございます!
[一言] なんかのヤバイ病気の兆候ってこともあるかもしれないから、武士みたいに臆病になるくらいが丁度良いのかも?
[一言] 祝100話♪オメデトウ 咳だけ残ると長引くんですよね… ホント、お大事になさってください
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