第八話【怪しい影が迫り来る】
それから時間は経ち、昼休み。俺は根城に頼んでおいたものを回収し教室へ行った。
「一応、先輩が言っていた通りのものですけど」
「あぁ、サンキュ。またなんかあったらくるわ」
「はいはい、分かりました。ただ、無駄な事件は起こさないで下さいね。これ以上……あんな姿の先輩の見たくないですから」
「分かってるさ。じゃあな」
別れを告げ、俺は根城の教室を後にし、歩き出す。
――あれ以上、俺の目の前で死人をだしやしないさ。九条は心のなかでそう呟き、誓っていた。
次に向かう場所は涼風が居るであろう生徒会室。今となってはすっかり慣れてしまった。とうとう社畜になったということか……。そんな思考をよぎらせながら扉を開く。
「あら九条くん」
「悪いな、邪魔したか?」
「いいえ、お昼も済ませたしちょうど時間が空いていたところよ。で、なんの用?」
くそっ、初手でいきなり謝るところ、まだ俺があいつより下だと本能的に悟っているようだ。このバカ。それは置いといて、いつもの場所に座る。
「今日の朝に来た白鷺ってやついただろ。あいつのことだ」
「そうだと思ったわ。それで、話の中身は?」
「あぁ。これは俺の勘だが、どうもあいつの話が危ないと思ってな」
「そんなの分かっているわ。そんなことのためにここまで来たのかしら。それだったら心配無用よ」
どうやら無駄な忠告だったぽいな。さすが、生徒会長なだけはあるな。
「ただ、どうして彼女は私たちだけに秘密を打ち明けたのかしら。頼れる場所はどこでもあるのに」
お互いが疑問だと思っている点は同じ。現在白鷺がかけられている術式は殺術の類い。索敵術ではないのが救いだ。
「単純に外だと監視の目があるからじゃないか。幸い、学園にいればそこらのセキュリティよりは安全だろ」
「そうであればいいのだけれど……」
「それに相手がまだ手を出さないってことは、相手も条件があるんだろ」
「発動条件、みたいなものかしら」
「ま、そんなところだ」
今のところなぜ彼女が狙われているかが一番の難題だ。もしも、その相手と戦うとするとなったとしても、この生徒会長さんであればなんとかなるだろうが。
「さっきも言った通り、心配は無用よ。あ、そう。今日の放課後彼女と出かけることになっているの」
「そうか。……って、それホントに大丈夫なのか」
「多分、ね。運がよければ、相手から来るかもしれないし。好都合だわ」
「分かった。ただ、無理はするなよ」
「『七星』さんの忠告は肝に銘じておくわ」
ちょうど昼休みを終えるチャイムがなった。そろそろ戻るか。
「じゃ、あとは任せたぞ」
そう言って涼風の肩を叩く。すると、ペシッと手を引き剥がされた。
「気安く触らないでくれるかしら。能力者としては認めたけど、人としては認めてないから」
ゴミを見るような目つきで睨んだ後、俺の前から消えていった。……人として見られただけでもマシなほうか。つーか痛ぇな。
時は流れ放課後。私は学園前で待っていた。
「いたいた〜」
勢いよく走ってきたのは白鷺さん。この後ショッピングするとか急に言い出したきた張本人。しかも集合時間からの10分の遅刻。
「あなたから約束してきたのだから、せめて時間通りには来てほしいものね」
「ごめんよぉ〜。今日日直だったことすっかり忘れてて。そしたら九条君が代わりにやってくれるって」
彼もつくづく大変ね。でも、彼女も殺術をかけられている身。なるべく助けてあげたい気持ちはわかる。なのに、その本人が一番浮かれている気がするけど。
「そう。なら行きましょう。遅くなってはあなたの身に危険があるからかもしれないから」
「うん」
二人は学園を後にし、歩き出す。
「で、どこに行くのかしら」
「最近新しくできたショッピングモールに行こうよ。そこに行けば私がほしいものが全部あると思うから」
「そう。あなたに任せるわ」
これは生徒会としての役目。その傍らに『友達』という意味は含まれていなかった。まるで、それを憧れるかのにように。
それからと言うもの特にこれといった出来事はなかった。彼女が行きたかったというファンシーショップに行き買いたい物を買ったり、ペットショップに行き猫をみたり、色々な場所へ行ったけど怪しい人物もいなかった。
ある程度回り、だいぶ疲れてしまった二人はフードコートで休憩をとる。
「いやー疲れた」
「ほぼほぼあなたの買い物だったけれどね」
「すーちゃんはなんか欲しいものはないの?」
「すーちゃんって私?」
「うん。それが1番良さげかなって思って。ダメかな?」
知らぬ間にまた新しいあだ名がついてしまった。けど、なぜだろうか、嫌な気持ちではなかった。
「いいえ、構わないわ」
「よかった〜! 嫌われたらやだもん」
「そんなんで私は人を嫌わないわ。それに好きの反対は嫌いではなく無視よ。経験上それが相手にとって一番効率のいい接し方だから」
「なんかすごいリアル.....」
大抵の男子は私に好意を寄せてくる。それが度を過ぎると無視していた。それでも来る場合は氷漬けにしていたけれど。
「それはいいのよ。それで、私が聞きたいのはその紋章。誰に術をかけられたのか本当に覚えてないの?」
気になっていた本題を切り出す。
「うん。ていうか、朝起きたら既にあったんだよね」
つまり、犯人は最初から白鷺さんの家も把握しての犯行。これは完全に彼女を狙ったもの。じゃあ、犯人の動機は? わからない。全く情報がない以上、こちらからは手を出せない。
ここで悩んでもダメね。考えることをやめ、目の前のことに集中しましょう。
「そう。他に行きたい場所はある?」
「あと一つだけあるの。時間大丈夫?」
スマホを取り出し時間を確認する。時間は午後5時。まだ人通りの数も多いし、そう簡単に犯人も手は出せないはず。
「えぇ、大丈夫よ。それとお手洗いに行ってもいいかしら」
白鷺さんは頷き、私は席を立ちお手洗いへと向かった。ここまで順調ね。このまま何も起こらなければいいけど。
「面白い!」、「続きが気になる!」
と思った方は下にある『☆☆☆☆☆』から応援してもらえると嬉しいです。
面白ければ星5、つまらなければ星1、正直な感想をくれても大丈夫です!
ブックマークもして頂けると泣いて喜びます。
よろしくお願いします。