表示調整
閉じる
挿絵表示切替ボタン
▼配色
▼行間
▼文字サイズ
▼メニューバー
×閉じる

ブックマークに追加しました

設定
0/400
設定を保存しました
エラーが発生しました
※文字以内
ブックマークを解除しました。

エラーが発生しました。

エラーの原因がわからない場合はヘルプセンターをご確認ください。

ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
5/28

第五話【模擬戦、そして始まり】

「――試合、開始」


「いくら模擬戦と言っても、全力でやっても構わないわよね?」


「あぁ、全力で来い」


「そう。ならいかせてもらうわ!」


 ――刹那、彼女の周りに氷の粒が浮き上がる。それはまるで弾丸のように俺に襲いかかってくる。


「これでも喰らいなさいっ!」


  大体の能力者なら、避けるか相殺させるかで対処するだろう。しかし、避けたところで無駄なことなどわかっていた。


  俺は右手を前に突き出すと、こっちへ来る氷弾(ひょうだん)は勢いをなくし、俺の目の前で完全に静止し、溶け消えた。


「それがあなたの能力なのね。たしかに『七星(しちせい)』に入るだけの能力ではあるわね」


「別に大したことじゃない。空気を使って止めただけだ」


 別に謙遜してるつもりはない。だがこの発言が、さらに相手を挑発させる火種になったことを九条 十夜は知らなかった。


「よく言うわね。だけど、これからよ」


 彼女は両手を羽のように高く上げると、俺の周りには無数の氷弾があった。流石、『七星』候補。今の動きで、俺の能力のカラクリがわかったようだ。


「あなた、空気を操るって言ったけど、実際は『()()()()()()()()()()()()()』でしょ?」


「……ほんと、『七星』候補は怖いな」


 九条は涼風の発言に対し納得して肩をすくめた。そう、涼風 氷華の言っていることは正しい。俺の能力は空気を操るのではなく対象が触れている空気を操る。


  俺は空気、厳密には酸素、窒素などと言ったもの当然のように操ることはできない。あくまで、対象の空気摩擦を操る。空気を操るのと何が違うのかと言えば説明するのは難しい。俺もメンドくなってきた……。


「怖いなんて失礼だわ。私はあなたより下の候補生だけどね!、『氷弾の雨(アイス・レイン)』!」


 涼風は高く上げた両手を一気に振り下ろす。無数の氷弾が俺に襲いかかる。四方からくる氷弾をくらったら重症だろこれ。


 避けることができない以上、こっちも止めるしかない。九条は右足を地面に叩きつけると、四方の氷弾がバラバラに砕けちった。


  これには涼風も驚きを隠せなかったのか、目を見開いていた。そのまま九条は、今度は左足で地を蹴り込み、地面と左足の間に新たに空気を生み出す。


 ーーその勢いは凄まじく速く、一瞬にして涼風の背後に回り込んだ。


「もういいか? 勝負はついた」


 誰もが勝機を確信した瞬間だった。――ただ1人、彼女を除いて。


「……ッ!」


 俺は嫌な予感がして、咄嗟に涼風から距離をとった。


「あら、気付いたのね。殺気が強すぎたかしら」


 その手には氷で造れられた氷剣が携えていた。見ただけで、強度とその切れ味に寒気がした。あれで切られたらただじゃ済まないぞ。あれ危ないって。


「女の子がそんな危ないもの持っちゃダメでしょーが」


「これは私の能力の一部に過ぎないわ。こんなもので怖がってはつまらないわよ」


 仕切り直し。互いに空いた距離をどう詰めるか。こっちは丸裸の状態。しかし、相手は武器持ち。圧倒的不利なのはこちらだ。

 それに、涼風の剣技も計り知れない。一度も見たことのない技には、さすがに注意を払う。



「さっさと終わらせようぜ。次の授業までそう時間はないし」


「構わないわ。なら、そっちから来なさい。」


「だったら、ちょっと本気でいかせてもらいますわ」


 九条は低めの姿勢を取る。左手を地につけ、呼吸を整え、一気に加速する。一瞬で涼風の前まで距離を近づけ、右手で顔を狙う。狙い済ました一撃。


 しかし、涼風は読んでいたのか。高速で動く九条に劣らず、反射神経を駆使しギリギリで横にかわす。


「ふっ、遅いわね」


 ステップでかわした勢いで氷剣を使い、横に薙ぎ払いう。九条もすぐに体勢を戻し、後ろへ回避する。その剣先は空を斬り、冷たい風がなびく。あと少し遅かったらおそらく腹を斬られていただろう。


「危ねぇよ。マジで死ぬってこれ」


「だから最初からそのつもりだって言ってるでしょ!」


 涼風はそのまま突進。氷剣を構え首筋を狙う。九条はなんとか避け、カウンターを放つ。直線的な攻撃に俺はまたしても違和感を覚えた。


 ――すると、右手で持っていた氷剣を捨て、左手で生成した氷弾を放っていた。今の一撃はブラフ。本当の攻撃はこっち。これははめられたな。



 ……なら、こっちもやるだけだ。


 既にカウンターとして放った左手を戻し、涼風の放った左手を肘と膝でロックする。


「――ッ!」


 放たれた氷弾ごと止め、砕け散った。


 さすがに驚いたのか、唖然とした表情をしていた。九条は隙を見逃さず、右手に拳を作り、空いている右方面に向かって放つ。涼風も対応しようとロックされた左手をほどき、無理やり後ろへ下がろうとする。


 だが、これもブラフだぜ。


 九条は右手を放たず体ごと回転させ勢いをつけた回転蹴り。これには対処出来なかった。俺はあたる直前で止める。


「今度こそ、勝負はついた。もういいだろ」


「……えぇ。私の負けよ。降参するわ」


 その勝負は思っていたよりも一瞬だが、互いの思考を巡らせ、読み合いを勝ち取った者が勝者となった。


「勝者、九条 十夜」


 伊藤先生の声とともに、模擬戦は幕を閉じた。




 それから時は流れて放課後。半強制的に生徒会室に連れて行かれると、昼休みの模擬戦の話になった。

 向かい合っているソファの間には長いテーブルがあった。涼風は若干怒っているように見れた。怖っ。


「で、あなたの能力は私の考えで合っているのかしら?」


「あぁ、あながち間違ってはない。流石だな」


「だとしたら、私の周りの空気を操作したりしてたら、もっと簡単に負かすことができたんじゃないのかしらね」


 どうやら、俺が手加減しているのではないかと思っているのだろう。だが、実際はそうでもない。


「いいか。俺の能力は案外頭をフルに使うものなんだよ」


「どういうことかしら?」


「つまりだな、対象の大きさがデカかったり、大量にあると、それだけ頭の中での演算が追いつかないんだ。いくら中身が強いって言っても、能力を使いこなせないなら意味がないってことだ。それに対象が有機物でないと使用できない」


「つまり、有機物でないとダメってことね……。ま、そういうことにしておくわ」


 涼風は不機嫌ながらも理解してくれたようだ。


「やっとあなたの強さが分かったわ。それを見せられたら、ますます生徒会の仕事も効率よくできるわね」


「おい、お前……はめたな?」


「何の事かしら? さぁ、早く行きなさい。仕事の時間よ」


 どのみちこのレールからは抜け出せそうにないな。九条 十夜は諦めながらも、その足は生徒会のために向かっていった。はぁ、仕事やだなぁ〜。




「私は書類の整理があるから、先に行ってちょうだい」


 私は九条くんにそう伝えると、一人考えていた。今日の昼休みにやった模擬戦。相手はあの『七星』なのに全くわからなかった。今までいろんな能力を見てきたけど、あんな能力は私は知らなかった。

 それに……、『七星』にしては弱すぎた。私が知っているのは、もっと強く、賢く、そして、何より他の能力者とは決定的に違う何かを持っている。戦いの基本をしっかりと学び、熟練しているはず。


 だけど、彼にはそれが分からなかった。これが未知の領域と言えば簡単なことだけど……。



「ーーません」



 雲泥の差、と言ってしまえば納得はできる。しかし、何かがおかしいのだ。まだ何かを隠している可能性が高い……。


「すみません」


「あら、ごめんなさい。気づかなかったわ」


 私は考えることに必死で誰かが入っているのに気が付かなかった。生徒会室に入ってきたのは、肩ほどまでに伸びた茶毛の女子生徒だった。


「あ、あの、九条くんいますかね……」




 ――こうして、新たな人物とともに戦いの火蓋は切られる。

「面白い!」、「続きが気になる!」



と思った方は下にある『☆☆☆☆☆』から応援してもらえると嬉しいです。


面白ければ星5、つまらなければ星1、正直な感想をくれても大丈夫です!


ブックマークもして頂けると泣いて喜びます。


よろしくお願いします。

評価をするにはログインしてください。
この作品をシェア
Twitter LINEで送る
ブックマークに追加
ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
― 新着の感想 ―
このエピソードに感想はまだ書かれていません。
感想一覧
+注意+

特に記載なき場合、掲載されている作品はすべてフィクションであり実在の人物・団体等とは一切関係ありません。
特に記載なき場合、掲載されている作品の著作権は作者にあります(一部作品除く)。
作者以外の方による作品の引用を超える無断転載は禁止しており、行った場合、著作権法の違反となります。

この作品はリンクフリーです。ご自由にリンク(紹介)してください。
この作品はスマートフォン対応です。スマートフォンかパソコンかを自動で判別し、適切なページを表示します。

↑ページトップへ