第十二話【最強による無双】
ポケットから小さい玉を取り出す。サイズはビー玉ぐらいのもの。そして俺は腹の奥から叫び、
「『神器』解放」
「『神器』だと……なぜお前が持ってる」
「『神器』ですって!?」
「え、何それ?」
さすがに後ろの方にいる涼風たちもその存在に息を飲む。
「『神器』。世界で十二人しか持つことない代物よ。『七星』の大半をこれを所持する、まさに神にも匹敵するといわれてるわ。ただの噂だと思っていたけれど……」
その玉は光に包まれ、やがて形を変え、一本の剣となる。
「浮遊剣リベロ・グラディウス。自由を象徴する剣だ」
まるで神話に出てくるような剣がそこに現れた。青を基調とした色彩は見るものを釘付けにする。九条はそれを右手で掴み取る。
「これが俺の本来の力だ。こっからが本番だぜ」
「いいぜェ。やる気が湧いてくるッ! 第二ラウンドといこーじゃねーか」
影山から放たれる火炎球。その数、およそ十数個。そのおびただしい数を相手にするのは至難の技だろう。
「行っけぇオラァ!」
しかし、俺は浮遊剣を使い火炎球を次々と斬り裂いていった。真っ二つに割れ、砕け散ってゆく。
「ハッ! ここまでまともに食らって立ってるとはやっぱり『七星』なだけはあるなァ。こっちは奥の手まで使ってるのにかないもしねぇ」
多分、奥の手とは先程の爆発だろう。身を呈した技。威力は絶大な分、反動のダメージがそうとうありそうだったからな。
「そっちが剣ならこっちも剣だ。フンッ! 『火炎脚剣』!」
全ての力を振り絞り、残りの能力を全て得意とする脚に寄せることで剣さながらの威力を生み出す、といったところか。
「はああああああああああああぁぁぁぁ!!!」
これが恐らく最後の『勝負』。こっち全力で行こうじゃないか。
両脚を巧みに使い、繰り出す十一連撃。それを俺は浮遊剣で受け止める。互いに刃が重なり合い、火花を散らす。
「こんなもんかァ! オラァ!もっといけよォ!」
クロスし合う剣はつばぜり合いとなり力勝負となった。だが、初めから勝負はついていた。
キンッと押し返されるのは影山の方だった。
「――ッ!」
「もういいだろ。そんなボロボロになってまでなぜ闘おうする?」
「言っただろう……俺だって依頼されたんだ……だからここで引くわけには……いけねェんだよ……」
途切れる言葉には嘘はない。互いにぶつかった結果だった。
「だからよォ、意地でも倒さねェとダメなんだよォ!」
残りの気力を振り絞った突進。たとえそれが届かないものだとしても。
流石は『七星』候補。本当に惜しい。アンタが敵ってことがよ……。
――だから俺も、全力でぶった叩く。あいつの為に。
それは九条の能力による超高速移動。影山の目の前まで一瞬で移動する。
「何ッ!」
振り下ろすは剣ではなく、漢の拳。
「あんたは強かったが、行使する力の矛先を間違えた。次会う時はもっと違う場所で……」
ズドォォン、という音とともに九条の右手が影山の顔にクリーンヒットしていた。そのまま吹き飛び、壁に激突し背を壁に預けながらズルズルと落ちていった。
影山は完全に意識を失っていた。
「なかなか強かったぜ、先輩」
闘いが終わると、剣はまた光を放ち、小さな球体へと戻っていった。
「終わった……の?」
「あぁ、終わった。今回の事件の全てが」
これで全てが終わった。何もかもがな……。
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