1/2
プロローグ
有村乃愛。28歳独身。
現在は、高校教諭として務めている。
前世の記憶がある、と言う点を除けばごく普通の人間としてまかり通っている。
今日もいつも通り終礼を終え、チャイムを聞きながら生徒達の礼を聞いている時だった。
「ノア!」
勢いよく扉を開き、切迫した表情で私の名前を呼んだのは、同じ高校に務める養護教諭。
彼女も、私と同じ前世の記憶を持ち、私と同じ世界にいた、名前は雨宮紫苑。
学校ではなるべく距離を置こうと、再会した時に約束した彼女がなりふり構わず私の腕を掴んだという事は、異常事態だ。
「魔力を感じたの、何かくるわ…!」
彼女がそう言い終えた瞬間、教室に魔法陣が描かれ始める。
なるほど確かにこれは異常事態だ。
魔法、魔力という概念を架空に持ちながらも、存在していないこの世界で魔法陣が描かれるなど到底ありえない。
しかもこれを、私は知っている。
勇者を導く、魔法陣だ──。