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普段通り登校1時間前に目を覚ました西川は、歯を磨き、コップ一杯の牛乳を飲むと、鞄の教材を確かめる。

前日のうちに時間割に合わせておいたが、朝の段階で最終確認を行う。

朝食を取ると制服に着替え、身だしなみを整える。

ここまでが西川紗紀の朝のルーティンワークだ。


行ってきますと家の中に声をかけ、家を出ると20分程で学校に着く。この時点で大体予鈴の10分前である。

何も優等生だからと、教室に一番乗りする必要はない。

ふと気になって、西川は小村の席を見る。

どうやらまだ登校してきていないらしい。

そもそも、気が付いたらいつの間にかそこにいるのが小村だ。

いつ登校してきて、いつ席についているのか、まるではっきりしない。

今日こそはいつ来るのか見届けてやろうと西川は意気込む。


予鈴が鳴った。遅刻常習犯の砂川が滑り込むようにして教室に入ってきたのを最後に担任が出欠を取り始める。西川の予想に反して小村の姿はまだ無かった。

「神田、倉田・・・・・・いない。小村、もいない。桜庭・・・・・・」

順調に出欠確認が終わり、小村は数名の遅刻者の中に埋もれる形となった。担任の声の調子からすると、あらかじめ欠席乃至は遅刻する旨の連絡を受けていると取れなくもなかった。


この日の3、4時限目は体育である。

体育倉庫の鍵は現在、改装工事に伴い、体育教官室ではなく職員室にある。

西川は更衣室を出るときに、職員室に用事があるからついでに鍵も取ってくると日直に告げた。

そして、「鍵の借用ついで」に、西川は担任に小村について尋ねることにした。

現段階では、遅刻者こそいたものの、クラスで登校してきていないのは小村だけだった。

「そういえば先生、今日小村さんは欠席ですか?」

こういうとき、「級友想いの優等生」というのは怪しまれないので便利だなと、西川はちら、と考える。

「ああ、小村な。なんでも、叔父の結婚式が急に前倒しになって、それで一週間ほど休むと連絡があったな。たいへん懇意にして頂いているそうでな、親族共々結婚式を兼ねた新婚旅行に呼ばれたそうだ」


西川の思惑通り、担任の佐野は少しも西川を怪しむことなく、聞いてもいない付加情報を含め、丁寧に答えた。

西川が机の書類箱に目をやると、確かに小村の、ファックス経由で届いたであろう欠席届が置いてあった。


全て嘘だろうと西川は直感する。

今度は何をしでかすつもりなんだろう。

確認の術がない以上、解決のしようがない疑問を抱えながら西川は職員室を後にした。


一方、当の小村はちょうどその頃、西川の思いとは遠くかけ離れた、アタトュルク行きの国際便に搭乗しようとしていた。

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