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Texit(テキサス離脱) ― 純金入りの赤い紙幣が  世界の終わりを知らせた ―

作者: 徒然生成
掲載日:2026/02/27

最初はただのバズ動画じゃった。

後で思えば、

世界が変わる始まりじゃった。


✦Texit(テキサス離脱)


― 純金入りの赤い紙幣が

 世界の終わりを知らせた ―


………


❥ はじめに


まさかは、いつも紙一枚から始まる。


ゆづきは、

夜中のTikTokで目撃した。


赤い紙幣——テキサス州の

Modern Texas Redback Gold Notes。


中に純金24Kが埋め込まれ、

太陽にかざすと金脈が輝く。


「これ、ドル死んだら

 生き残る保険じゃん!」


彼女は即注文。 


5cgのロングホーン柄。

届いた紙幣をライブで透かす動画が、

100万ビュー爆発。


コメント欄:「Texitガチ?」

     「金持てZ世代!」


翌朝、ニュースが炸裂。


掘ムズ海峡封鎖。

慰安軍のドローンがタンカーを沈め、

原油300ドル。


ドル暴落、

1ドル=360円。


ゆづきの銀行アプリが凍る。

「緊急措置:預金封鎖」。


パニックの日本、

行列のスーパーで

一万円札を差し出すと、

店員が嘲笑。


「そんな紙、誰も要らんよ。

 金か銀出せ。」


ゆづきは

Redbackを握りしめ、

アパートの窓辺で透かす。


金が……脈打ってる?


紙幣が振動し、

ホログラムのように

州知事の声が響く。


「ローンスターの民よ、

 連邦は崩壊した。

 テキサス共和国、再誕。」


TikTokがダウン。

画面にローンスターの旗。


全米プレッパー150万人が

テキサスに集結、

州境封鎖。


ゆづきのスマホに通知:


「日本政府、

 八重山諸島独立宣言。

 B円復活。」


彼女は息を飲む。

歴史は繰り返す。

SFじゃなかった——現実じゃった。


Redbackが掌の中で

冷とう光っとった。


ゆづきは思うた。


「これ

 ……ネタじゃなかったんじゃ。」


日本のの空は

いつも通りじゃった。


じゃがその日から、

世界は前と同じには

見えんようになった。


………


★目次


■第一章 まさかの前

■第二章 テキサスという国

■第三章 国家は切れる

■第四章 慰安が掘ルムズ海峡を

     閉めた日

     (2026年2月27日・今日)

■第五章 ドル崩壊と八重山の記憶

     (2028年2月)

■第6章 白昼夢


❥追補小説 赤い紙幣事件ホームズとワトソン


………


■第一章 まさかの前


わしは四十年、

証券会社で相場を見てきた。


上がるときも下がるときも、

だいたいは読める。


じゃが、

「まさか」だけは読めん。


そして今回のは、

どうもその「まさか」らしい。


人生には三つの坂があると

先人は言う。


上り坂と下り坂、

そしてもう一つがまさかじゃ。


まさか銀行が潰れるとは

思わなんだ。


まさか土地が

半値八掛け二割引になったあと、

手が届かんほど

暴騰するとは思わなんだ。


まさか円が

世界最強通貨になったあと、

半値以下になるとは思わなんだ。


株もそうじゃ。


わしの現役時代、

日経平均は7000円を切れんかった。

それが常識じゃった。


その株価が今じゃ

六万円を目指しとる。


常識いうもんは平気で壊れる。

それを何度も見た。


じゃが今回のは

いつもと様子が違う。


ある朝、スマホを

スクロールしとったら、

英語のニュースが

目に飛び込んできた。


「Modern Texas Redback Gold Notes」


赤い紙幣じゃった。

中に純金24Kが層になって

埋め込んどる。


5センチグラム、20センチグラム、

100センチグラム。

長角牛、州議事堂、アラモ。

州知事と会計監査官のサイン入り、

個別番号付き。


ただの記念品と書いてあった。


じゃが四十年

金融の世界におった人間には分かる。


これは通貨の準備じゃ。


一万円札はただの紙じゃ。

ハイパーインフレになったら

外国に持って行っても

誰も両替してくれん。


ただの紙じゃからな。


じゃがのぅ、

この赤い紙幣は違う。


純金が入っとる限り、

戦争になろうが

ドルが紙くずになろうが、

ゴールドの重さだけは残る。


日本に持ち帰っても

銀座の地金商で即金。


世界中どこでも通用する

「生き残りのチケット」

なんじゃ。


わしは震える指で孫娘のゆづき

(16歳、TikTokインフルエンサー志望)

にLINEした。


「ゆづき、

 テキサスの赤い紙幣知っとるか?」


返事は30秒後。


「おじーちゃん! 

 それ今爆バズってる! 」


「『Texit本気すぎ』って

 動画回ってる!」


「みんな『世界変わる』

 って言ってる!」


わしはテレビをつけた。


NHKも、民放も、新聞サイトも

——完全に沈黙じゃった。


その瞬間、わしの中に

確信が生まれた。


本当に大きい変化は、

最初は報道されん。


そして思い出した。


戦争のあと、沖縄の南の島々では

本土の円が

使えん時期があったそうじゃ。


国いうもんは突然切れる。

電気のスイッチみたいにな。


わしは確信した。


テキサスが静かに動いとる。


飴理科の中のテキサスが、

別の国になろうとしとる。


その最初の証拠が、

この赤い紙幣なんじゃ。


■第二章 テキサスという国


テキサスは、

ただの州なんかじゃない。

昔、本物の国じゃった。


1836年3月2日。

メキシコから独立を宣言した瞬間、

テキサス共和国が誕生した。


旗は星一つ——ローンスター。

9年間、ちゃんと

一つの国として生き抜いた。


大統領もおれば、

議会もあれば、軍もあった。


そして1839年、

彼らは自前の紙幣を刷った。


名はRedback。


赤いインクで刷られたその紙幣は、

テキサス全土で通用した。


しかし

——純金も銀も

一グラムも入っとらんかった。


結果は惨めじゃった。


価値はどんどん落ち、

紙くず同然。


人々はそれを

「赤いゴミ」と呼んで

吐き捨てた。


その失敗は、

テキサスのDNAに

深く刻み込まれた。


「紙だけでは流通せんわぃ!」 


——その教訓が、

百八十年間、静かに眠っとった。

それが今、目覚めた。


2025年12月29日。


テキサス州政府は、

Modern Texas Redback Gold Notesを

正式に発行した。


赤いポリマー紙幣。

中に純金24Kが層になって

本物で埋め込んどる。


5センチグラム、20センチグラム、

100センチグラム。


長角牛、州議事堂、

アラモのデザイン。


州知事と会計監査官の直筆サイン入り、

個別シリアルナンバー。


これは記念品なんかじゃない。

歴史のやり直しじゃ。


1839年の失敗を、

金で塗り替えるための

復讐みたいなもんじゃ。


そして今、

テキサスはもう一つ大きな

動きを見せとる。


全米から

プレッパーが殺到しとる。


生き残りを本気で準備する

人間たちじゃ。


推定150万人

——大阪市と同じ規模の人間が、


「ここなら生き残れる」


と荷物をまとめて

テキサスに流れ込んどる。


なぜテキサスか。


土地が安い。


一エーカー数万円で

買えるところもある。


井戸は自分で掘れる。

畑は自分で作れる。

隣の家まで車で十分かかる。


自家発電機、太陽光パネル、

雨水タンク。


政府が来んでも、銀行が潰れても、

ドルが紙くずになっても、

自分たちだけで生きていける

土地柄なんじゃ。


彼らが信用するのは、

たった三つ。


土地。

水。

ゴールド。


銀行の数字も、連邦政府の約束も、

ワシントンの紙幣も、

全部信用せん。


信用するのは、

自分の足で踏める大地と、

自分の手で汲める水と、

自分の目で確かめられる

ゴールドだけ。


だからこの新しいRedbackは、

彼らにとって投資なんかじゃない。

生命保険じゃ。


一枚持っとけば、

ドルが死のうが、

飴理科がバラバラになろうが、

ゴールドの重さだけは絶対に残る。


世界中どこへ持って行っても、

金は金じゃ。


銀座の地金商でも、

ドバイの市場でも、即金になる。


テキサスは静かに、

しかし確実に、

「もう一つの国」へと動き始めた。


1836年のプライドが、

1839年の失敗が、

2025年のゴールド紙幣で蘇っとる。


まさか、

こんなことが起きるとは——

わしはそう思うた。


だが、

もう「まさか」なんかでは済まん。

これは現実じゃ。


■第三章 国家は切れる


国家は、永遠なんかじゃない。


ソ連は一瞬で消えた。


1991年、クリスマスの夜。

巨大帝国が、

地図から跡形もなく消えた。


一夜にして15の国が生まれ、

国境がバラバラに引き裂かれた。


ユーゴスラビアは、

もっと残酷じゃった。


血みどろの内戦。

同じ国に住んでた隣人が、

突然敵同士になって銃を向け合った。


一つの国が、

7つに砕け散った。


それまで

「当たり前」だった国境なんて、

実はただの線に過ぎん。


一晩で消える。

スイッチ一つで。


日本でも、ちゃんと起きた。

戦争が終わった1945年。


沖縄の南——特に八重山諸島では、

本土の日本は

「もう関係ない」

と切り捨てられた。


飴理科軍が即座に

ヤエヤマ軍政府を置いた。


住民に八重山暫定政府を作らせ、

自分たちで行政を回せと命じた。


本土の日本円は一切使えん。


代わりに流れたのはB円

——米軍が刷った軍用手票だけ。


これが唯一の通貨じゃった。


独自のルール、独自の経済、

独自の生活。


本土とは完全に切り離された。


まるで

「もうこの島は日本じゃない」

とまで言われた。


教科書にはほとんど出てこん。

学校で習わん。


でも、

これは紛れもない事実じゃ。


八重山の人たちは、ほんの数年間、

「日本から独立したも同然」

の世界を生き抜いた。


国家いうもんは、

絶対なんかじゃない。


切れる時は、突然切れる。

電気のスイッチみたいに。

銀行のシステムみたいに。

アプリが一斉に消えるみたいに。


君たちZ世代よ。


毎日TikTokで世界中を

スクロールしてる君たち。


「国境なんて永遠にあるもん」

って思ってるやろ?


「日本はいつまでも日本」

って安心してるやろ?


違うんじゃ。


今、テキサスが同じことを

静かに始めとる。


赤い紙幣に純金を埋め込んで、

プレッパー150万人が

全米から逃げ込んで、


「もう連邦政府のドルはいらん」


と動き出した。


歴史は繰り返す。

教科書に載らんかった

八重山の「まさか」が、

今、飴理科のど真ん中で起きとる。


その瞬間が、

今、始まっとるのかもしれん。


「ゆづきちゃんへ…

 君のスマホが映してる赤い紙幣は、

 ただのバズ動画なんかじゃない。


 それは、

 国家が切り替わる最初の音じゃ。


 覚悟せえ。

 世界は、君が思うより

 ずっと簡単に止まる。


 スマホが固まるみたいにな。

 そのときになってからじゃ、

 遅いんじゃ」


 

■第四章 

 慰安が掘ルムズ海峡を閉めた日

 (2026年2月27日・今日)


朝のキッチンで、

じーちゃんは

ニュースアプリを睨みながら

コーヒーを啜っていた。


突然、画面から

飛び出してきた見出しに、

黒い液体をテーブルに

ブチまけた。


「なんてこった!

 トランポリンはんが

 やってくれたわ!」


ホワイトハウス記者会見の映像。


トランポリン大統領が

マイクを握り、

いつもの調子で吠えていた。


「慰安に

 10日から15日の猶予を与える。

 核合意を結べ。

 さもなくば、容赦なく

 ぶち込むぞ!」


背景で、慰安最高指導者

褒めネェ師の

脅しが字幕で流れる。


「飴理科軍は

 世界最強かもしれないが、

 叩きのめされて

 立ち上がれんようになるぞ。」


じーちゃんの指が震えて、

Zoomを起動した。


孫娘のゆづきが画面に現れる。


彼女はベッドの上、

髪を乱して笑い転げていた。


「おじーちゃん、朝イチで噴射? 

 動画撮っとけばバズったのにw」


「TikTok見たらもう

 『Hormuz Blackout』

 チャレンジが大流行!」


「みんな石油缶持って 

 『ガソリン300円時代来るぞ』

 って踊ってるよ!」


じーちゃんは眉を寄せた。


「ふざけとる場合か。

 慰安が今日、掘ルムズ海峡を

 部分閉鎖したんじゃ」


「IRGCの連中が実射演習で

 ミサイルぶっ放しとる」


「Fath-450やShahed-136ドローンを

 島嶼に撃ち込んで、

 『米軍艦隊を沈める準備』

 言うとるわ。」


画面越しのゆづきが

目を丸くした。


「え、マジで? 石油価格、

 もうWTIが120ドル超えてるって

 通知来た!」


「タンカー運賃が

 2020年以来の最高値だって」


「中東から中華国への

 VLCC料金が1日20万ドル超え?」


「これ、ガソリン値上がり

 確定じゃん!」


じーちゃんは深く息を吐いた。


「原油輸出の25%、

 LNGの20%が

 あの狭い海峡を通る。

 一時閉鎖でも、

 市場はパニックじゃ」


ドルが揺らぐ。

ユーロが揺らぐ。


円なんか、もっとヤバい。

1ドル=180円突破の兆しが見えとる。


「証券マン時代のわしは、

 こんな地政学リスクで

 何度も財産を失った」


「1980年代の慰安・慰楽戦争で、

 原油が3倍になった時を

 思い出すわ」


「あの時はタンカー保険料が

 跳ね上がって、

 世界経済が凍りついた。」


ゆづきはスマホをもう一台持ち上げ、

TikTokのライブをチェック。


「Z世代の海外フォロワーから

 コメント殺到!

 『Texas is the new safe haven』

 だって」


「プレッパーたちが

 全米からテキサスに大移動中」


「カリフォルニアのITエンジニアが

 『ここじゃドル死ぬ』

 ってピックアップトラックに

 銃と食料積んで南下してる動画、

 100万ビュー超え!」


「Redbackの売上、

 昨日だけで5倍だってニュース!」


じーちゃんは頷いた。


「テキサス州政府が

 Redbackを州内決済で

 試験導入した途端じゃ」


「純金入り紙幣が、

 ただの記念品じゃなくなった」


「プレッパー150万人が、 

 土地を買って井戸を掘り、

 『連邦政府崩壊しても生き残る』

 と本気で備えとる」


「ニューヨークの金融マンまでが

 テキサス移住セミナーに

 並んどるらしいわ」


「日本人はどうじゃ? 

 平和ボケで、

 株価下落を

 『買いのチャンス』とか

 言っとるだけか?」


ゆづきの表情が引き締まった。


「おじーちゃん……私、

 今日からRedback貯金始める」


「TikTokで

 『Z世代のサバイバル投資』

 シリーズ作るよ」


「掘ルムズみたいに、

 世界のスイッチが切れたら、

 紙の円じゃ

 トイレットペーパーにもならん」


「ゴールドだけが本物だって、

 じーちゃんの言葉、

 胸に刺さった。」


じーちゃんは画面越しに微笑んだ。


「ええぞ、ゆづき。

 これはただの演習じゃねえ」


「慰安が核交渉で譲らんかったら、

 トランポリンはんが本気で攻撃する。

 海峡完全封鎖で、原油200ドル。

 ドル崩壊の引き金になる」


「テキサスはもう、

 静かに離脱の準備を

 終えとるんじゃ。」


その日、世界の地図が少し揺れた。

掘ルムズの波が、

テキサスの赤い紙幣を輝かせた。


ゆづきはライブをスタートした。


「みんな、今日から備えよう。

 Texitはファンタジーじゃない。

 現実だよ。」


■第五章 ドル崩壊と八重山の記憶

     (2028年2月)


わしは、

ソファの上で目を凝らした。


画面が揺れる。

ニュースアプリの赤い警告が

点滅しとる。


慰安との限定戦争が勃発した。


トランポリン政権の

最後通告が無視され、

飴理科軍の精密爆撃が始まったんじゃ。


掘ルムズ海峡は実質封鎖——3週間。


慰安のミサイル艇が

タンカーを威嚇射撃。

原油は一気に250ドルを突破。


ドルは暴落。

1ドル=360円。


いや、もっと落ちる。

市場はパニックじゃ。


日本政府は

「緊急金融措置」を発動した。


預金封鎖の噂が広がり、

銀行前の行列は数キロ。


老人たちが杖を突き、

若者たちがスマホを握りしめ、

「現金を引き出せ!」と叫ぶ。


スーパーではルールが変わった。


「現金のみ」から、

「金・銀のみ」へ。


一万円札を差し出しても、

店員は首を振る。


「そんな紙、誰も信じんよ。

 金塊かコイン持ってきて。」


街は静かに狂い始めた。


その頃、ゆづきは

テキサス・アラモの前から

TikTokライブを撃ち続けとった。


背景にローンスターの旗が

はためく。


彼女は100cgのRedbackを

太陽にかざす。


赤い紙幣の中に、

純金がキラキラ輝く。


「みんな見て! 

 このRedback、

 中に本物の24K金が

 入ってるんだよ」


「日本の1万円札と違って、

 戦争が起きても

 価値ゼロにならない」


「ドルが死んでも、

 ゴールドの重さだけは

 生き残るわ」


「八重山の人たちは戦後、

 米軍に『お前らもう日本じゃない』

 って切り離されて、

 B円だけ使って

 『自分たちで生きろ』

 って言われたんだよ」


「独自の政府、独自の経済

 ——一時的に独立したみたいなもん」


「今の日本人はそんな

 歴史知らないから、

 また同じ失敗繰り返すわよ」


「今、テキサスが同じことやってる! 

 Texitは現実! 

 備えろ!」


視聴者500万人超。

コメントが洪水のように流れる。


トレンド1位:「Texit日本人も覚醒」


Z世代の叫びが、

世界を駆け巡る。


「ゆづき神」

「Redback買った」

「日本ヤバい」

「じーちゃんの予言的中」


ゆづきの瞳は燃えていた。

彼女はわしの言葉を繰り返す。


「まさかは、いつか来る。

国じゃなく、自分を持て。」


わしは画面を見つめ、息を飲んだ。

胸が熱くなる。


「これが、

 わしのまさかじゃ。

 四十年相場に携わった末に——」


……そして、突然。

目が覚めた。


六十七歳のわしは、

ふるさとの 実家のソファで、

天井をぼんやり見つめていた。


白昼夢じゃった。

 

スマホの画面はまだ点いとる。


本物のニュース

——2026年2月のホルムズ演習の記事。


ドルはまだ暴落しとらん。

テキサスはまだ離脱しとらん。

Redbackは

まだ発行されたばかりの記念品。


じゃが、心臓の鼓動が止まらん。

夢の残り香が、鼻をくすぐる。

ゆづきの声が、耳に残る。


■第6章 白昼夢


中国の古い格言に、

こんな言葉がある。


「一睡の夢」

——一晩の夢は、千年の現実を語る。


目が覚めたとき、

部屋は妙に静かじゃった。


慰安との戦争も始まっとらんし、

掘ルムズ海峡も閉まっとらん。


ドルもまだ生きとるし、

スーパーでは普通に

一万円札が使える。


世界は今のところ、

昨日とあんまり変わっとらん。


テレビをつけたら、

朝の情報番組が

芸能人の話をしとった。


世界が終わりそうな日でも、

テレビはだいたい平和じゃ。


わしは立ち上がって、

窓辺に置いた赤い紙幣を手に取った。


Modern Texas Redback Gold Notes。


5cgの小さな一枚じゃ。

光に透かすと、

中の純金が細う光っとる。


大げさな光じゃない。

静かな光じゃ。


まるで

「まあ慌てなさんな」

言うとるみたいな光じゃった。


わしは少し笑うた。


世界が明日終わるとは思わん。

Texitが明日起きるとも思わん。


トランポリン大統領も、

たぶん今ごろどこかで

機嫌よう喋っとるじゃろう。


慰安もいつも通り、

強いこと言うて

様子見しとるはずじゃ。


つまり世界は、

しばらくは続く。


たいていの「まさか」は、

すぐには来ん。


じゃが、

来るときは

だいたい普通の日じゃ。


ニュース速報が鳴る前に、

もう始まっとる。


わしは赤い紙幣を

机の引き出しに戻した。


鍵はかけんかった。

泥棒が来ても、

たぶんこれは持って行かんじゃろう。


見た目が妙に赤うて、

怪しい紙幣じゃからな。


それでも、

この小さな紙幣の中には

確かな重さがある。


数字の重さじゃない。

約束の重さでもない。

ただのゴールドの重さじゃ。


Z世代の君らは、

スマホの中で世界を見とる。


それはそれでええ。

わしも毎朝スマホを見とる。


じゃが、もしある日、

画面が真っ暗になったらどうする?


アプリが

全部消えたらどうする?


フォロワーも口座残高も

一緒に消えたらどうする?


そのとき残るもんは、

案外少ないかもしれん。


土地かもしれん。

水かもしれん。


あるいは、

引き出しの中の

小さな何かかもしれん。


わしには分からん。


じゃが一つだけ分かる。


「まさか」いうもんは、

来てから信じても

遅いいうことじゃ。


窓の外では風が吹いとった。

夕方の光が部屋に差し込んどる。

どこにでもある普通の日じゃ。


赤い紙幣のことは、

しばらく忘れることにした。


じゃがたぶん、

また思い出すじゃろう。


ニュースの中かもしれん。

夢の中かもしれん。

あるいは、

君のスマホの画面の中かもしれん。 


そのとき、

「ああ、あの赤い紙幣か」

思い出してくれたらそれでええ。


世界はたぶん、 明日も続く。

じゃが予感いうもんは消えん。


赤い紙幣は今日も、

引き出しの中で

静かに光っとる。


まるで、 次に何が起きるか、

もう知っとるみたいに。


そしてわしは、

たぶんまた明日の朝も、

スマホを開くじゃろう。


世界がまだ続いとるか、

確かめるために。


           (完)


………


❥ 追補小説:赤い紙幣事件


ロンドンのベーカー街221B。

霧の朝。


ホームズはパイプをくゆらせ、

スマホを睨む。

ワトソンは新聞を広げて

コーヒーを飲む。


ホームズ: 「ワトソン君、大変じゃ!

      世界が割れるぞ!」


ワトソン: 「またですか、先生。

      昨日は

      『紅茶の葉が予言する』

       って言って、

      ただの

      ティーバッグでしたよ。」


ホームズ: 「ふざけるな!

      今回は本気じゃ。

      飴理科が

      溶けるんじゃ!」


ワトソン: 「溶ける?

      アイスクリームじゃあるまいし。

      根拠は?」


ホームズ: 「これじゃ! 赤い紙幣!」


      (スマホを突き出す。

       画面にテキサスの

       Redback Gold Notes

       が映る)


ワトソン: 「あぁ、

      また通販詐欺ですか?

      先生、前に

      『魔法のキノコ』買って、

      ただの椎茸だった 

      じゃないですか。」


ホームズ: 「バカ者! これ、 

      中に本物の24K金が

      入っとるんじゃ!

      純金層が

      埋め込まれとる!

      5cg、20cg、100cg

      ——長角牛のデザインで

      州知事のサイン入り!」


ワトソン: 「金?チョコレートの

      金貨みたいですね。 

      溶かして

      食べられるんですか?」


ホームズ: 「食うな!

       これは通貨じゃ!

      テキサス州が発行した

      Modern Texas Redback

      Gold Notes!

      1839年の旧Redbackの

      失敗を繰り返さんための、

      金入り復刻版じゃ!」


ワトソン: 「は? テキサスが紙幣?

      飴理科の州が

      そんなこと

      できるんですか?

      連邦政府が

      黙ってないですよ。」


ホームズ: 「それが黙っとるんじゃ!

      ドルがヤバい証拠じゃ。

      掘ルムズ海峡の

      慰安緊張で

      原油200ドル超え、

      ドル暴落の予兆。

      テキサスは

      プレッパー150万人が

      全米から逃げ込んで、

      Bug-out State

      (逃げ込み州)に

      なっておる!

      銃、水、金——

      これで生き残る

      準備じゃ!」


ワトソン: 「プレッパー?

      先生、また

      陰謀論動画

      見すぎですよ。

      TikTokで

      バズってるやつ?

      『Texit来てるw』みたいな

      Z世代のネタでしょ?」


ホームズ: 「ネタじゃねえ!

      TikTokで

      ゆづきみたいな

      Z世代がライブしてるぞ!

      『Redback買え!

      ドル死ぬ!』って、

      視聴者300万超え!

       コメント欄が

      『Prepare! Buy gold!』

      で埋まっとる!」


ワトソン: 「ゆづき? 誰ですかそれ。

      先生の孫? いや、待てよ

      ……これ、全部

      夢オチじゃありません?

       前に

      『モリアーティがAI』

      って夢見て、

      起きたらただの

      通知音でしたよね。」


ホームズ: 「夢じゃねえ!

      歴史が証明じゃ!

      ソ連は1991年に

      一夜で崩壊、

      15の国に割れた!

      ユーゴスラビアは

      血みどろの

      内戦で7つに粉々!

      日本だって戦後、

      八重山諸島が

      米軍に切り離されて、

      B円だけ流通

      ——独自政府で

      『日本じゃねえ』って

       独立同然じゃった!

       教科書にない

      本当の話じゃ!」


ワトソン: 「八重山? B円?

      先生、朝から

      ウィキペディア読みすぎ。

      じゃあ次はTexit?

      テキサスが独立?

      笑わせないで、星条旗が

      ローンスターに 

      変わるんですか?」


ホームズ: 「笑っとる場合か!

      次はドルが溶ける!

      ハイパーインフレで

      一万円札が

      トイレットペーパーより

      安くなる!

      Redbackだけが生き残る

      チケットじゃ!

      わしはもう注文したぞ、

      100万円分!」


ワトソン: 「注文? 先生、

      年金溶かさないで!

       私、帰りますよ。

      こんな漫才みたいな話、

      付き合えません。」


ホームズ: 「待て! ワトソン!

      これは一睡の夢じゃねえ!

      中国の格言じゃ——

      『一睡の夢は

      千年の現実を語る』。

      Z世代よ、

      TikTokの向こうで

      笑っとる君たち!

      世界は脆いぞ。

      ゴールドを持て、

      自分を持て。

      まさかは来る、静かに、

      でも確実に。」


ワトソン: 「……先生、心配です。

      完全に終わりましたね。」


     (ため息をつきながら、

      ホームズの

      スマホを覗く。 

      画面に赤い紙幣が輝く)


ホームズ: 「終わっとらん!

      始まりじゃ!

      笑え、ワトソン。

      だが、心を締め付けろ。

      Texitは、

      君の未来じゃ。」


場面暗転。

霧のロンドンに、

赤い紙幣の影が揺れる。


Z世代の笑いが、

静かに消える。


                    

                (完)

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