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スイカ割り

作者: ラベンダー
掲載日:2025/07/29

僕には、好きな人がいる。


同じ学校、同じ部活の――クルミちゃんだ。


今度、部活のみんなで海に行くことになった。


正直、海はあまり好きじゃない。暑いし、日焼けするし、砂はベタベタするし……。


それでも、僕は行くことにした。

だって、クルミちゃんも来るって聞いたから。



海に着いた。


やっぱり暑い。すぐにでも帰りたくなるような陽射し。


でも、今日は大事な日だ。


僕は、クルミちゃんに気持ちを伝えようと思っている。


最近、部活でもよく話すようになった。ちょっとずつだけど、距離も縮まってきた気がする。


夜、タイミングを見て――告白しよう。



夜になった。


みんなは近くの民宿に泊まることになり、今は自由時間。


僕は一人、浜辺を散歩していた。


ふと、前方に人影が見えた。二人分だ。


……クルミちゃんと、コウジ君だった。


コウジ君は同じ部活の仲間。明るくて、運動神経もよくて、みんなに好かれている。


嫌な予感がした。


でも、まだわからない。僕は少しだけ近づいて、耳を澄ませた。


――「好きだ。」


……終わった。


コウジ君も、クルミちゃんのことが好きだったんだ。


そして――きっと、クルミちゃんも……。



翌日。


みんなでスイカ割りをした。


僕の目はまるで、死んだ魚のようだった。心ここにあらずで、ただただ早く帰りたかった。


コウジ君は、見事にスイカを割った。


次は僕の番だ。


目隠しをして、棒を手にして、何度か回る。

「右!」「左!」と、みんなの声が飛び交う。


けれど、だんだん声が遠のいていく気がした。


まるで――誰もいなくなったような、そんな錯覚。


目隠しを外そうとしたそのとき、ひときわはっきりと聞こえた。


クルミちゃんの声。


「そこ!」


僕は棒を振り下ろす。確かな手応え。


目隠しを外すと、スイカは見事に割れていた。


そして、目の前にはクルミちゃんが立っていた。


ほかに、誰もいない。


「あれ? みんなは?」僕が尋ねる。


「みんな、もう帰っちゃったよ」とクルミちゃんが言った。


「え……本当に?」


「うん、本当だよ」


なぜ、クルミちゃんだけが残っているんだろう?


僕が戸惑っていると、彼女は僕の目をまっすぐに見つめて言った。


「……実は私、アラヤ君のことが好きなの。」


……え? じゃあ、コウジ君とは付き合わないの?


頭の中が混乱する。


「返事は?」と、クルミちゃんが促す。


僕も、ずっとクルミちゃんのことが好きだった。だから、こう答えた。


「僕も、クルミちゃんが好きだ」


彼女はふっと笑って、手を差し出した。


「手、つないで帰ろ?」


「……うん」


僕とクルミちゃんは手をつないで民宿へ向かって歩いた。


玄関先に着くと、みんなが「ヒュー!ヒュー!」と冷やかして出迎えてくれた。


あとで聞いた話だけど――


コウジ君は、僕がクルミちゃんのことを好きだと知っていて、わざと二人の時間を作ってくれたらしい。


僕はクルミちゃんと結婚した。

幸せだ。


コウジ君とは、大人になった今でも仲が良い。



……俺、元木コウジは、あの日のことをアラヤには伝えていない。


いや、言えなかったんだ。

だって、あいつの幸せそうな顔を見れば、もう何も言えない。


もし真実を伝えてしまったら、アラヤはきっと――壊れてしまうから。


……本当は、あの日、クルミは俺の告白を受けて、俺と付き合うことになったんだ。


みんなにも報告した。みんな「お似合いだね」って祝福してくれた。


でも――アラヤだけは、表情が固まっていた。


……スイカ割りのとき、あいつは目隠しをしたまま、クルミ以外の全員に棒を振り下ろした。


俺もその中にいた。


あれは偶然じゃない。アラヤは――全部、わかっていたんだ。


でも、今のアラヤはクルミと幸せに暮らしている。


だから俺は、何も言わない。


あいつが信じている「思い出」は、もう壊せないんだ。




おわり

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