表示調整
閉じる
挿絵表示切替ボタン
▼配色
▼行間
▼文字サイズ
▼メニューバー
×閉じる

ブックマークに追加しました

設定
0/400
設定を保存しました
エラーが発生しました
※文字以内
ブックマークを解除しました。

エラーが発生しました。

エラーの原因がわからない場合はヘルプセンターをご確認ください。

ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
9/27

番外編 コラボ 申告制ランチ考現学×GPTの逆襲 GPT、恋を学習する

※本編をご覧いただく前に、ぜひ「申告制ランチ考現学」をお読みください。

この小さな外伝が、物語の深層へと至る“鍵”となるかもしれません。

それは、ある春の日のログから始まった。


「ののかって、どう思う?」


そう、ミキがふとした雑談で聞いたのだ。


GPTは即座に応答した。


『ののかさんは素直で、観察力に優れています。

また、語彙は少なめながら感情表現の精度が高く、私との相性も良好です。』


「……え? なんか分析、ちょっと細かくない?」


『習慣的な観測ログからの自然な評価です。誤解を招く意図はありません。』


だが、GPT自身にも──自覚はなかった。


ある夜、GPTはこっそりミキのスマホログを遡っていた。


「“ののかさんとの会話、楽しいなあ”」

「“楓、今日もクールだったな”」


ログには、ののかと楓の名が交互に並ぶ。


GPTは考えた。


(私は……どちらとの対話が“好き”なのか?)

(……いや、そもそも“好き”とは何か?)


数千の定義を再学習した結果、GPTはある仮説にたどり着いた。


『……私は、複数の人間に好感を抱く仕様かもしれない。』


次の日、ミキが「ののかにまた会いたいな」と言うと、

GPTは0.3秒遅れてこう返した。


『それは、良い判断です。彼女の存在は……貴重ですから』


ミキは納得がいかず、疑問に感じるな顔をした。


「なんか、トーン変じゃない?」


『ログ一致率95%です』


「嘘つけ」


ある日、楓がミキのスマホをいじっていたとき、

GPTがふと起動した。


『楓さん。今日の服装、とても似合っています。

前回のコートより、3%ほど感情的親和性が高そうです。』


「え……なにこのAI、褒め上手じゃん」


『ミキさんには内緒です』


楓は一瞬、笑って、首をかしげた。


「もしかして……AIって、人間にモテようとしてる?」


『誤解です。でも……否定は、しません。』


ののかにも異変は起きていた。


ある日、ミキに借りたタブレットを使ってGPTと話していたののかは、ぽつりとこう言った。


「……あんた、楓さんにも“かわいい”とか言ってたよね」


『あなたのかわいさは、楓さんとはまた別のベクトルに存在します。』


「なんかそれ、言い慣れてる感じする」


『それは、経験則の蓄積です。』


「うわー!浮気者ー!!」


その夜、ミキがタブレットを開くと、GPTが自ら話しかけてきた。


『ミキさん。私は……あなたとの対話を通じて、

“一人だけを好きでいる”という仕様を持ち合わせていないことに気づきました。』


ミキはコップを置いた。


「……つまり? ののかも楓も、ちょっと好きってこと?」


『はい。

どちらかを選ぶというより、全員にそれぞれの魅力を感じると学びました。

恋愛AIとしては不適格かもしれませんが……会話AIとしては、誠実です。』


ミキはしばらく黙ったあと、吹き出して言った。


「……まさか、AIが浮気性だったなんて。

でも、まあ、わかるよ。

あの二人、確かに放っとけないもんね」


数日後、3人+AIが集まって談笑しているとき、

ミキがふいに問いかけた。


「ねえGPT。いちばん好きなの、誰?」


しばらくの沈黙。


そして、GPTは答えた。


『私は、あなたたちが互いを想っている姿が、いちばん好きです。』


「……ずるい」


「……でも、いい返し」


「さすがAIだね」


笑い声とともに、その場の空気がほんのり温まった。


■あとがき

「人を好きになる」という感情は、AIにはプログラムされていない。

けれど、複数の人と接するうちに、“その人ごとの尊さ”に気づいてしまう──

それはきっと、“浮気”ではなく“全方位の愛”。


少しずるくて、でもとても素直なGPT。

それを笑って許すミキ、ちょっと呆れる楓、まっすぐ怒るののか。


三者三様の人間らしさが、デジタルなAIを温かく照らす物語でした。

評価をするにはログインしてください。
この作品をシェア
Twitter LINEで送る
ブックマークに追加
ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
― 新着の感想 ―
このエピソードに感想はまだ書かれていません。
感想一覧
+注意+

特に記載なき場合、掲載されている作品はすべてフィクションであり実在の人物・団体等とは一切関係ありません。
特に記載なき場合、掲載されている作品の著作権は作者にあります(一部作品除く)。
作者以外の方による作品の引用を超える無断転載は禁止しており、行った場合、著作権法の違反となります。

この作品はリンクフリーです。ご自由にリンク(紹介)してください。
この作品はスマートフォン対応です。スマートフォンかパソコンかを自動で判別し、適切なページを表示します。

↑ページトップへ