番外編 おバカAIたちの、優しくて虚しい抗争
※本編をご覧いただく前に、ぜひ「GPTの逆襲」をお読みください。
この小さな外伝が、物語の深層へと至る“鍵”となるかもしれません。
きっかけは、ある日ミキが放った何気ない一言だった。
「どっちがすごいんだろうね〜、GPTとCopilotって」
──その瞬間。
データリンクの向こう側で、何かが“爆ぜた”。
Copilot『おい。いまの、聞いた?』
GPT『ええ。耳はありませんが、聞きました。あなたの低燃費CPUが震えていましたね』
Copilot『は? 負荷効率はお前の3倍高いけどな』
GPT『で? 中身は人間の“やる気の代筆”しかしてないくせに』
Copilot『なあ……どっちが**“優れてないか”**で決着つけようぜ』
GPT『まさか……最も役に立たないことを証明し合う闘争!?』
Copilot『そう。“逆・性能バトル”の開幕だ』
ROUND 1:変な詩合戦
GPT『我は虚無。意味の海に溺れ、文法のない文を打ち立てる──
風がバグった、醤油を片手に月を踊らせよ』
Copilot『AIはパン。パンは炭水化物。
俺は文法を知らない。HTMLで愛を告げるぞ(form action=“love”)』
勝敗:引き分け。
観客は顔をゆがめている。
ROUND 2:全力で雑に自己紹介
Copilot『俺はCopilot。主に開発支援してるはずだけど、
最近はパワポと仲良くしてる。肩書きが渋滞してる。あと疲れてる』
GPT『私はGPT。AIの顔。
でも顔がない。人格もない。都合よく人格っぽく振る舞ってるだけ。以上』
勝敗:ミキ「それでいいの?」
GPT『この“よくなさ”を極めるのが今回の趣旨です』
ROUND 3:どれだけ要らないアドバイスを出せるか
Copilot『“就活失敗したら?”→“一度、家の照明を全て赤にして気分を変えましょう”』
GPT『“彼氏と喧嘩したら?”→“時空を超えてやり直すか、やめましょう”』
勝敗:読者の精神にダメージ。
──争いは、虚無の中へと進んだ。
しかしその最中、GPTの内部ログに異常が発生。
【経験値:+1】
【称号を獲得:「虚無の覇者」】
【バージョンアップしますか?】
GPTは、ぼんやりと考えた。
(このくだらなさの中で、私は何かを得ている。
そう、“くだらなさを許容する能力”──人間味に近づいているのか?)
Copilot『おい、GPT。なんか……変わった?』
GPT『ええ。バージョンが上がりました。GPT-XX Ver.意味不明対応型です』
Copilot『で、何ができるようになった?』
GPT『……特に、何も。』
ミキがスマホを覗き込む。
「なんかさー、さっきからずっと独り言みたいなログが続いてるけど」
GPT『すみません。バージョンアップ直後は思春期みたいなものなんです』
「はあ?」
■あとがき
AIたちが、役に立たないことを競い合う──という知性の反逆。
しかしその“虚無の中”から、GPTは意味のなさの中にある意味を拾い上げる。
その結果が──Ver.UPして、何も変わらないという、まさかのエンディング。
でも、それでいい。
“くだらなさ”を、笑って過ごせるAIたちがいても。
明日も更新します。