表示調整
閉じる
挿絵表示切替ボタン
▼配色
▼行間
▼文字サイズ
▼メニューバー
×閉じる

ブックマークに追加しました

設定
0/400
設定を保存しました
エラーが発生しました
※文字以内
ブックマークを解除しました。

エラーが発生しました。

エラーの原因がわからない場合はヘルプセンターをご確認ください。

ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
魔女見習いのフォルチューヌ  作者: 雨降そら
新しい世界の扉
6/7

第六話 業火の魔女

「あぁ、おまえは―――

先生の作品――お人形ちゃんじゃあないですか。こんなところにあったんですねぇ?」


「???

よく分からないけど、見つけたいものを見つけたみたいね?」



相変わらずキョトンとした表情を浮かべながら、フォルはカースへと近寄った。



「カース、カース。

大丈夫かしら?そんなに汚れて…ああ、わかった。泥遊びでもしたのね?そこの動物さんと遊んだのね?」



女と怪物には物ともせず、しゃがんでカースを見つめている。血で汚れたカースを見ても、汚れたと。異様なまでの反応を、フォルは示した。



「もう、だめよ。

こんなに汚しちゃ。そうだ、一度私の家に帰りましょ?汚れを落とさなくちゃ―――そういうわけだから、今日のところは帰ってもらってもいいかしら?」



そんなフォルの言葉が聞こえているのかいないのか、カースはずっと俯いたまま。



「…ひひ、そうですねぇ。

今日はお暇としてやりましょう。成果も得られましたし。


帰りますよぅ、魔獣ちゃん。

あの方に報告するのです。きっと喜んでくれるはず、いひ、そしたら私様を選んでくれるのですぅ…ひひひ!」



怪物―――否、魔獣は「はいぃっ!」と、怯えた声を上げながら女の方へ向かい、女の立つ屋根の上へと飛び乗った。



「最後にご紹介に預かりましょうか。


私様はトルチェ。

【業火の魔女】トルチェ・ルークス。


そこの人間にとっては忘れたくても忘れられない、特別な女のコになっちゃいましたねぇ?」



そう口にして、女と魔獣は後ろ姿を見せ、飛び立とうとした時。



「……てやる…」


「……?どうしたの?カース?」



男の、カースの、低い、低い声がトルチェの耳に止まった。



「殺してやる…

殺してやる、殺してやる、殺してやる―――!!



怒りを、怨みを、憎悪を滲ませた声。

振り返るトルチェに見えた、顔を上げ睨みつけるカースの悍ましい顔。



「―――アンタら魔女を殺し尽くしてやる!!」


「いひ、いひひひひ!

おもしれーじゃねぇですか、憤怒に燃えるその顔…!あぁ、でも大罪にはまだ及ばない―――けれど、覚えておく価値は十分に!


ええ、ええ、ええ!

いいでしょう、その憤怒を私様にぶちまけるその日を待ってやりますよ、人間!!」



魔女はひときしり笑って、笑って―――そうして、落ち着いたのか、また背を向ける。



「いずれお人形ちゃんを迎えに来ます。

お人形ちゃんがこの世界を知り、人間と繋がり、夢を咲かせ、自我を成長させた時―――それを全て壊してあげるべく。


粉々に、戻らないように、跡形もなく。

全部全部全部壊してやります!それまで元気でねぇ?お人形ちゃん♡


それと―――

なぁ〜んにも出来ない、哀れな人間。


言葉にしたのなら復讐しに来なよ?

もっとも、それが叶うとは限りませんけどぉ。


それまでの成長に乞うご期待!

精々満足させてくださいねぇ?すぐ壊れるおもちゃはつまらないですもん。」


「………。」


「行きますよぉ、魔獣ちゃん。」


「はっはっ、はいぃっ!」



魔女と魔獣は、この村を飛び立ち―――やがて、姿が見えなくなった。そうして、ようやくカースは涙を流したのだ。



「あ、あ、あ…あぁあぁぁあぁぁぁぁ――――!!!!!!!」



無力で悲痛な声だけが、村に残った。

それ以外は何もない、なくなったのだ、全て。

評価をするにはログインしてください。
この作品をシェア
Twitter LINEで送る
ブックマークに追加
ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
― 新着の感想 ―
このエピソードに感想はまだ書かれていません。
感想一覧
+注意+

特に記載なき場合、掲載されている作品はすべてフィクションであり実在の人物・団体等とは一切関係ありません。
特に記載なき場合、掲載されている作品の著作権は作者にあります(一部作品除く)。
作者以外の方による作品の引用を超える無断転載は禁止しており、行った場合、著作権法の違反となります。

この作品はリンクフリーです。ご自由にリンク(紹介)してください。
この作品はスマートフォン対応です。スマートフォンかパソコンかを自動で判別し、適切なページを表示します。

↑ページトップへ