第四話 虫の報せ
二人は村への道を進む。
聞こえるのはただ、二人の足音と、木々の揺らぐ音。それに加えて、村に近づくに連れて―――何かの叫び声が聞こえたような。
魔獣の鳴き声であろうか。
カースは、そう思いたかった。
何かが燃えるような臭いが、鼻にツンと刺さる。
だから、異変に目を向けるしかなかった。
「……なんか、変な臭いがしないか。」
「……そう?
言われて嗅げば、そうかも。なにかが焦げたようなにおい…クッキーを作るのに失敗したときと、同じ匂いだわ。
いいえ、それよりも…もっと、ひどい…」
嫌な予感に、カースは走り出す。
背け続けていた虫の知らせを押し付けられたように、それが嘘であれと願いながら、カースは駆ける。石に躓いて転んでも、立ち上がって進む。
「まっ、待ってよカース!
どうしたの?何があったの!?まっ、まってぇ〜!」
やがてカースは、必死に追い掛けてくるフォルを置いて、一人先に森を抜けて、村へと――――いや、村"だった"ものへと、辿り着いた。
「なん、だよこれ…」
焦げ臭い臭い。
血生臭い臭い。
真っ赤に染まる世界。
嫌な予感に次第に早くなる鼓動、呼吸、流れる冷や汗、鈍る思考、震える手足。
「あ、ぁ…そ、そうだ!母さんは、父さんは、村のみんなは!?」
それでも。
それでも行かなくてはと、カースは燃え盛る村へ足を踏み入れた。