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魔女見習いのフォルチューヌ  作者: 雨降そら
新しい世界の扉
3/7

第三話 魔女の夢

それから、カースは話を聞いた。

彼女の知る魔女の姿を、彼女の目指す魔女の姿を、彼女から、魔女の話をたくさん聞いたのだ。


どれも前向きなものであった。

彼女の知る魔女の姿は、まるで英雄のようであった。困る人々を助け、魔法で幸せにしていくのだ。


彼女の目指す魔女の姿は、まるでアーティストのように世界を回り、魔法を掛けて人々を喜ばせていく、そんな姿。



村の人々から聞いていた話とは、正反対の魔女の話。カースはそれらを聞いては、魔女へのイメージが変わっていく、悪いものから、良いものへ、少しずつ、少しずつ…。



「カースのお話を聞くはずが、すっかり私の話になっちゃった!」



口の前に手を当てて、無邪気に笑うフォル。

それに釣られて、カースもまた笑うのだった。


ふと、外を見遣る。

日も落ち、すっかり暗くなってしまった外。


季節が冬ということも相まって、太陽は早くも隠れてしまったのだろう。


「もうずいぶんと暗くなってきたし、今日はここで泊まっていく?」



暗い森の中は魔獣の絶好の狩場。

この村の辺りには、危険とも呼べる魔獣はいないけれど、その提案を呑むのもまた良かっただろう。


けど。





何故か、胸騒ぎがした。







「いや…

大丈夫、みんな心配するからさ、帰るよ。」


「そう?

なら、私送るわね。夜の森は暗くて危険だわ、だから一緒に行こう?」



一人で帰るには心細い。

…というよりも、まず一人で帰れるのかすら分からない。ここに来る間の意識は殆ど無く、無意識であったから。


だから、フォルの提案は心強いものであった。

女の子に守られ安心するなど、男の子として情けなくはあったけど。



ともあれ家から出れば、すっかり暗くなった外になんとも言えぬ不安を覚えながらも、そういえばお互いに村の場所が分からないのではないか、とカースは口を開いた。


「ありがとう、フォル。

この森の近くにある村が俺の家…なんだけど、分かる?」


「来た道がわかんなくなっちゃったのね?

任せて、出来る魔女が解決してしんぜましょう!」



フォルの足元に、魔法陣が現れる。

明かりの沈んだ森の中に、フォルが生んだ光。


やがて、小さな光がフォルの肩に触れたかと思えば、それは来た時に見た蝶へと姿を変えていく。蛹から蝶へと成るように、美しく。



「この子が案内してくれるわ。

それじゃあ、行きましょ。」



先をゆく蝶を追いかけるように、フォルは一歩踏み出した。そのフォルを追うように、カースもまた底しれぬ不安を抱え、一歩を踏み出したのだった。

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