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魔女見習いのフォルチューヌ  作者: 雨降そら
新しい世界の扉
1/7

第一話 魔女の家

――今や遠い、昔の話です。

私の師匠と見上げた星空、その瞬き。


数多に降り注ぐ流星に、私はふと思い出したように、流星へ願いを込め、それが叶うようにと祈りました。


本で読んだことがあったのです。

空に流星が流れた時、消える前に願いを込める、そうすれば願いが叶うのだと。


私はそれを信じて、手を組み、願うのです。




    "             "



「お師匠。

お師匠は、どんな願いごとをしましたか?

ほら、流れ星の話…願いが叶うという、あの話です。」



「……はは、そりゃ秘密さぁね。

願い事を誰かに話せば、その願いは叶わぬとも言われているからね?」


「…は!!

そっ、そうなのですかっ!?

ではお口チャック、ですね。あぶないあぶない…」


口の前にバッテンを作り、ふたりでどっと吹き出して…それからまた、空を見上げた。


流星はまだ、振り止むことをしらない。

キラキラと世界に降り注ぐ流星は、いつまでも、いつまでも…今日が終わるまで、耐えることはなかったのです。



――――――――――――――――――



「それじゃあ、行ってくるよ。

暗くなるまでには戻るから!」


背負子を背負い、斧を持った少年。

この少年はどこにでもいる、普通の男の子であった。

長い髪の毛はポニーテールにして纏め、少し目にかかる前髪、その髪の色は漆黒。


目の色は輝く黄金色であった。



「まって」

少年を呼び止めたのは少年の母親である。



「あまり森の奥へ行っては駄目よ?

こわ〜い魔女が住んでいるんだから。取って喰われちゃ―――


「その話、もう何回目だよ。

だいじょーぶだって、分かってるから。」


「……そうね。

でも、気を付けて。ほんとうにおっかないんだから。」


「わかったわかった。

それじゃあ、行ってきます!」



母親から、家族から、それから村の人々にも見送られ、それに対して手を振って返して、少年は森の入り口へと、森の中へと入っていった。



この森に来た理由は単純で、燃料の補給である。

今は寒い寒い冬の季節、薪といった燃料になるものを採取すべく、少年は己の背よりも高い木を1本1本切っていくのだが。



「……?」



ちいさい、ほんのちいさな、光。

いや、これは蝶であったか。蝶のような形をした、小さな光が少年の肩へと乗り、少年がそれに気付けば―――肩から旅立ち、先へ飛んでゆく。


まるで着いて来いと言うように、少年が歩くのを待ち…少年が首を傾げ、警戒のけの字も失ったかのように、何かに魅入られたように羽ばたく蝶の後ろを歩いてゆく。



気付けば、随分と深い森へと進んでいた。

そこでようやく、はっとした少年が失っていた意識を取り戻したかのように瞬き、顔を上げると、そこには――――



ちいさな、家があった。



――――――――――――――――――



明らかに怪しい。

この家に近付いてはならないと、直感でそう感じたというのに。


手が勝手に、扉へと伸び―――


コン コン コン 。


3回、静かな森へノックの音が響いた。

気付いたときにはもう、扉が開いていて、中からは淡藤色の髪に三つ編み、まんまるい赤紫の目をした少女が出てきていた。



――――――――――――――――――



「ふん♪ ふふん♪ ふふん♪

お客さまが来たのはいつ振りかなぁ。」



やけに縮こまった少年は、ずっと歌う彼女を見つめている。いつ逃げられるか、機会を伺うように、足を震わせながら。



「ねぇ、ねぇねっ、お客さま。

お客さまのお名前が聞きたいの。教えてくれる?」



そう口にしながら、少女はテーブルに花の模様で彩られたティーカップと皿を置いた。皿の上には、焼きたてであろうクッキーが用意されている。



「………カストル。

みんなからはカースって呼ばれてる。」


「カストル…カース。

それって、お星さまの名前と同じね?」


「父さんが、星の名前付けたって言ってた。」


「そうなの?

素敵な名前ね、私、星が大好きなんだ。

だからその名前、気に入っちゃった!」



客人が手を伸ばす前に、家のものである少女がクッキーに手を付ける。頬に手を添えて、美味しいと言うような仕草を見せてくるけれど、カースは手を付ける気にならなかった。



「食べないの?カース。

すっごく美味しく焼いたのよ?」


「お腹が空いてなくて…

それより、アンタの名前は…」


「私はフォルチューヌ。

フォルでいいわ。ねぇカース?もっとキミの話が聞きたいわ。聞かせてくれる?」


「………その前に、アンタ…

フォル、アンタは…その。」



ぱちぱち、煌めく赤紫の瞳がカースを捉える。



「魔女、なのか。」


魔女の口角が、上がる。

閲覧頂きありがとうございました!

少しずつ更新できればと思いますので、何卒お付き合いして頂ければ幸いです。

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